「今月のひとこと」の目次 毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。 2003年 6月 1日 5月 3日 4月 1日 3月 2日 2月 2日 1月 1日
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6月1日
なかなか梅雨に入らず、台風がやって来たりして、このまま夏に突入しそうな気候です。 世の中は中東の情勢が何とか下火になったら、今度はSarsでアジアが騒然。 アメリカの景気は一喜一憂で、ドルは上がったり下がったり、対円のユーロは最高値になっていますが、反面ドイツは調子が悪くて日本の二の舞とになって来て、社会主義化が行き過ぎたせいだと言われています。 日本は、りそな銀行騒ぎが意外に静かで、なんとなくアメリカの景気に引っ張られて調子が良くなって来ているようです。 この小文が出るころには株価は上がっている事と思います。 アメリカもヨーロッパと仲が悪くなったきたので、言うことを聞く日本は重要なパートナーで訪米した首相も大歓迎されたようです。 反面キツイ要求もしてこなくなったので外圧で動く我が国としては、方向が定まらない恐れも出てきます。

政治と経済ばかりに目が向いていましたが、ハッとITの分野を振り返ると、これがすごい勢いで進展しています。 ADSLに代表されるブロードバンド加入者も1000万の大台に後一歩と言うところまで来たようです。 PCの世界ではCPUのクロックが3GHzを超えるようになってきて、2.4GHz程度のCPUでは1万円そこそこになってきたようです。 CPUのクロックもさることながら、これは小さなチップの中の話なので速くなるのは理解できるとしても、チップの外の基板上のクロック、FSBと言われているものですが、これがとうとう800MHzになってしまいました。 対応するメモリはまだ少なく2つペアで使わないといけないし、高速のは高価ですが、333MHzとなると512Mバイトで1万円そこそこになっているようです。

CPUチップと並んで重要なのはマザーボードと言われる、メインの基盤です。 先ほどのFSBはこの基盤の上のメモリとCPU間の速度を言います。 これが30cm四方の大きな基盤で、いろんなチップや部品やコネクタが実装されているのですが、これがまた1万円そこそこ。 出たての頃は4万円とか5万とかするのですが、すぐに安くなってちょっと古いと1万円を切ってしまいます。 メーカーは台湾の独壇場で、多くのメーカーがあります。 月に100万枚も生産するそうで、この点に限っていると日本もまったく追い付けません。 最近では中国の会社も力を付けてきているようですが、先端の製品ではかなりの技術が必要になってくるのでまだ台湾メーカーが有力です。 CPUの規模という点では、20年ほど前に68000と言うモトローラのチップが出たときに、メモリ空間が16Mバイトと聞いて何に使うんだろうと不思議に思ったことがあります。 その頃の常識はせいぜい64kバイトで、メガというような単位はほとんど想像外でした。 逆に言うと、その頃はそれくらいのメモリで一応は何とか処理をこなしていた訳で、1000倍以上の落差は何なんだろうと思います。 これはほとんどGUI(グラフィックユーザインタフェース)の問題であろうと思います。 また標準化されたアプリケーションプログラムの作り方にも影響されているのでしょう。 つまりはマイクロソフトがその恩恵を最大限に享受していることです。 その結果を我々が使って現時のような便利なツールが出来上がっているのでしょう。 更には最近ではAV(オーディオビジュアル)があります。 ワープロや表計算では現在のPCでも十分すぎるくらいの性能を持っていますが、AVを処理しようとすると更に1000倍の規模で性能アップが必要になります。 ソニーが向いているのはこの方向でしょう。

CPUの進化と同時に外部メモリの主役のディスクドライブもビックリするくらい進化しています。 120Gバイト程度のATAインタフェースで133Mbの転送速度でもこれまた1万円そこそこで入手できます。 少し前に球場の上をジャンボジェット機が飛びその下にアリが1匹いると言うTVコマーシャルがあったことを覚えていますか? 一見してディスクの事を言っていると思いましたが提供している会社は記憶にありませんでした。 最近その話題が雑誌に出ていて、ディスクのヘッドの材料を供給しているメーカーという事が分かりました。 このコマーシャルが何を言わんとしているかと言うと、ディスクの円盤を野球場とみなすと、その上にあるデータを読み書きするヘスピンドルモーターッドは磁気ヘッドジャンボジェットと同じ大きさになり、そのヘッドと円盤の隙間がアリの大きさである1-2mmしかない、小石でも駄目、と言う事です。 実際のディスクではヘッドがジェット機みたいに動くのではなくて下の円盤が回るのですが、この時に要求される精度が如何に常識を外れたものであるかということを示しています。 この隙間が小さければ小さいほど高密度にデータが読み書きできるのです。

しかし最近ではこの隙間の距離にも限界が出て来、また円盤の磁化する区画の大きさにも物理的な限界が見え始めていますので、次は垂直磁化であると言われています。 垂直磁化とは、現在は磁化の方向が水平で、読み書きはやさしいものの、面積を取ると言う欠点があり、以前より面に対して垂直方向に読み書きする技術が必要とされてきました。 しかし従来方式の水平磁化もヘッドの材料の進化、円盤を回したりヘッドを動かすサーボ技術が進化したことなどで、驚くべきことに、半導体の集積化速度(ムーアの法則で知られる)とほぼ同じ高密度化速度で進化してきました。 ちなみに、先ほどのTVコマーシャルのヘッド材料メーカーもディスク円盤を回すモーターのメーカーも日本の会社がほぼ独占しており、垂直磁化でも日本も大学が先鞭を付けていますので、またノーベル賞が出る可能性が出てきました。 しかしながら垂直磁化の話は15年ほど前から出ては引っ込みなので今回も本当に垂直磁化が必要になるのかどうか、従来の技術の延長線で可能なのかはまだ判断が出来ないと思います。

インターネットはブロードバンドになり、実質的に100Kバイト/秒程度の速度が日常的に使えるようになりました。 1メガのファイルを転送するのに10秒ですから、まあまあの速度です。 ギガレベルの伝送はほとんど問題なくて、10ギガぐらいは実用になりそうです。 このような実験は沢山行われています。 後は如何に商業ベースにするかででしょう。 LANともなると、ひところの10Mbpsから最近では100Mbpsが常識になっています。 実質的には5Mバイト/秒くらいが使える速度ではないでしょうか。 5メガのファイルを1秒で転送ですから感覚と合うと思います。 最近実用になり出したのは1000Mpbsのイーサネットです。 Thousand Base-T とは言いにくいので、ギガビットイーサと言っています。 従来のイーサネットと互換性があり、前述の3種類の速度をサポートしているハブやインタフェースカードが市販されています。 なぜこんなことが出来るかというと、イーサネットのケーブルは元々4対の線があるのですが、10Base-Tや100Baae-Tではそのうちの2対つまり半分しか使っていなかったのです。 これをフルに使うようにして、さらに伝送速度を上げて1000Base-Tが実用になりました。 光イーサとかあったのですが、従来のものとの互換性がないものは如何に良くても流行らないと言う事がハッキリしたと思います。

現在のPCにそのまま挿入できるインタフェースカードも数千円で入手出来るようですが、100Base-Tと比べてあんまりそんなには速くならないようです。 と言うのはインタフェースカードの内部インタフェースであるPCIバスの速度が10年以上前の規格で1000Base-Tの速度に追いつかないのが原因です。 このため最新のPCではメモリやCPUに直結するインタフェースでデータ転送を行うようになっています。 またまたPCを買い換えないといけない理由が出来上がったようです。

なぜこんな速度が必要かと言うと、 それはビデオをPCに格納することが可能になってきたからです。 先ほどのディスク容量も急速に大きなものが必要になったのはこのせいです。 音楽なら1曲でせいぜい数メガあれば良いのですが、映像となるとその1000倍の数ギガは必要になります。 120Gバイトですと2-30時間は録画できますが、その転送は時間がかかります。 昔の規格の USB1 では、1時間のTV番組を録画したものを転送すると1時間かかると言う変なことになります。 100Base-Tのイーサネットでも5Mバイト/秒しか出ないとなると、5Gバイトの映像データを送るのに1000秒、つまり15分以上かかる計算になり、現実の条件の良い通信でも10分程度はかかっています。 これが1000Base-Tで10倍とはいかなくても3倍になれば転送は5分で済む事になります。 これからは映像の時代です。 ソニーはちょっと勇み足で先に行き過ぎてPC事業の見直しをしているようですが、早晩このようになり、またPCつまりはITの世界が変化することでしょう。 映像は音楽よりもっと影響が大きくて、映像の処理技術は既に言ったような高性能のCPU、大容量のディスクドライブ、高速のローカルネットワーク、更には高速のブロードバンドで光ファイバがやっと必須になり、現時点では宝の持ち腐れの感が否めません。 こうなると現在進行しているデジタルTV放送にも大きな影響があり、TV放送はだんだんとなくなっていくでしょう、固定電話がだんだんとなくなってきているように。 しかし最後の砦は無線です。 放送は無線ですから、どこでも受信できます。 一方のブロードバンドは光ファイバではなるほど映像の配信は可能ですが、無線を使ってとなると、役不足です。 更に反面、放送は片通行ですから上り方向には何かの通信手段が必要になります。 と言うことで現時点では決定的な方向はありませんが、なんとなくPC側に有利に動いているように思えます。

今月の読み物は、 ゲーデル・不完全性定理―"理性の限界"の発見、 ブルーバックス (B-947) 吉永 良正 (著) 価格:¥1,040。 アインシュタインと仲の良かったゲーデルですが、「何とかと天才は紙一重」の典型みたいな人です。 筆者も書いていますが、このタイミングで生まれなかったら、単なる変人で終わった可能性は極めて高いと思います。 サブタイトルにある理性の限界と言うのは一時流行して、哲学者を含んだ論争になったそうです。 何をやったかと言うと、要するに一つの体系の中ではその体系が正しいかどうかは判断できないと言う、ある意味では常識的なことですが、これを数学的に厳密にやったと言うことです。 また、この中でゲーデル数を使って証明の証明を行うのですが、これが今で言うプログラミング言語の源であり、数学的な定義をしているので、IT分野の我々にも大いに関係があるとともに、ご先祖様であるわけです。 これを元にノイマンが現在のコンピュータの原型であるノイマン型コンピュータを作ったと言われています。

なぜこんな事(体系の証明)にみたいな事を始めたと言いますと、カントールと言うこれまた変人中の変人が変人のエネルギーで集合論を創始したと言うのは微かに覚えておられると思いますが、この集合論によって、それまで直感的に正しいと思われていた事、例えば反対の反対は正しいとか言うことすら、厳密には証明できなくなって、このままでは数学は学問として崩壊してしまうというところまで来ました。 その当時の学会の大御所はヒルベルト空間という言葉も微かに覚えておられるともいますが、このヒルベルトであって、数学の体系自体の無矛盾性を証明しようとしましたが皮肉にも老年になってこの意図が不可能であることを知らされました。 この辺りは現代数学の成立に絡む壮大な物語ですので、この部分だけでも大いに読み応えがあります。 下手なノンフィクションより余程面白い。 主な登場人物だけでも、カントール、デデキント、ラッセル、ヒルベルト、ワイル、ブロウウエル、ゲーデル、ノイマン、アインシュタイン。 梅雨の1日、数学に浸ってみては如何?

ゲーデルの不完全性定理は中学生にもわかる! 「不完全性定理」の名は、数学ファンはいうにおよばず、20世紀の思想に少しでも興味のある方なら、理系、文系を問わず、だれもが1度は耳にしていることと思います。 しかし、「では、その内容は?」となると、大半の人があいまいにしか答えられないのではないでしょうか。「どうせ超難解な理論だろうから、わからなくて当たりまえ」と、はじめからあきらめている人もいるかもしれません。ところが、この定理の証明のアイデア自体は、いたってシンプルで明快なものであり、きちんと説明すれば中学生でも理解できるものなのです。本書では実際に、そのような説明を試みてみました。(本書「はじめに」より)







5月3日
今年の連休は飛び石となって、多くの企業ではカレンダー通りの休みになった所が多かったようです。 天気には恵まれて雨だったのは1日だけでした。 まだ3日ですがこれからも良い天気が続くことでしょう。 それにしてもイラク戦争は、後で思えばあっけなく3週間で終わってしまい、ハデな演出のブッシュ大統領の終結宣言も空母の上から行われました。

しかし、このイラク戦争は戦争と言う観点ではナポレオン戦争をモデルにしたクラウゼヴィッツの戦争論を越えた画期的なものであったようです。 従来は物量戦で、とにかく多くの兵器を使って敵の戦闘力を叩くというもので、太平洋戦争の末期に例えば硫黄島などで行われた不必要とも思える砲撃でとにかく全てを破壊すると言うような「消耗戦」でした。 今回のイラク戦争が注目されているのは、特にアメリカが得意としてきた消耗戦を止めて「ショック戦」を採用したことです。 この戦争の名前が「衝撃と恐怖」作戦であった事と密接に結びついています。

ショック戦の特長はとにかくスピードと事前の爆撃による情報網の徹底的破壊でしょう。これによりイラク軍は戦闘が始まったときには既に命令指揮系統がズタズタになっていて、組織的な反撃が出来なかったようです。 戦争がはじまって1週間ぐらいで砂嵐で進軍が止まったとき、補給線が伸びきっていると思いましたが、これも計画のうちで、3日分しか食料も持っていないと言うことでビックリしました。 しかし、これも補給よりスピードを重視する作戦の一部だったようです。

このショック戦を推進したのはラムズフェルド国防長官で、それに対する従来型の消耗戦を支持したのがパウエル国務長官です。 しかし、それまでも国防省内では両派に渡る激しい議論があったようです。 この国防長官の方針に従って、叩き上げの軍人であるフランクス将軍が忠実にこれを実行したと言うのが全体の図式のようです。 従って、戦争前には20万員規模の大規模軍の投入が言われたり、戦争がはじまっても10万員規模の追加投入が言われたりしたのは、この方針の違いによるもので、国防長官と現地総指揮官は、ショック戦の基本を忠実に実行して成功したと言うべきでしょう。 パウエル国務長官の方が何となく人気がありますが、こと戦争論に関しては彼は墨守派で、ラムズフェルド国防長官のほうが革新的です。

ショック戦に似たものは太平洋戦争時の日本軍があります。 補給と言うことをほとんど顧みないのは同じで、奇襲によって相手に「衝撃と恐怖」を与えると言う点で似ていますが、内容は全く異なるでしょう。 日本軍の場合は物資が元々少ないので、いくらスピードがあっても打撃を与えるには少なすぎると言う点。 またレーダ開発の遅れに見られるように情報戦に対して劣っていたことがあります。 しかし、出来る出来ないに関わらず基本的には同じ意図を持った考え方であるでしょう。

今回のショック戦で重要な役割を果たした兵器に精密誘導兵器があります。 ITのカタマリと言っても良いようなもので、前回の湾岸戦争で試験的に使われ、アフガニスタン戦で実用テストを行ったもので、この性能が飛躍的に向上したことで、戦争の形態が大きく変化しました。 またこれを運ぶ航空機も大きな役割を果たすようになりました。 特にスピードを要求するショック戦では航空機特に爆撃機の役割が大きくなります。 さらに潜水艦の役割りも日本周辺では大きくなります。 既に巡航ミサイルを潜水艦から水中発射出来るように潜水艦を改造しているとの事です。

従って、これからのアメリカの軍需産業、日本の公共事業みたいにアメリカ政府の財政政策の対象、は質的な変化をしていくでしょう。 恐らく通常爆弾のようなものを大量に製造するのではなくて、精密誘導ミサイルや爆撃機みたいな高価なものを少し作るようになるでしょう。 また、アメリカ本国からの兵員輸送が迅速に行えるのであれば、各地に置いている基地の重要性も変化するかも知れません。 少なくとも規模の縮小は可能でしょう。 これからアメリカ経済も双子の赤字が復活し、どうなるのか予断は許しません。

また、ブッシュ政権は中東問題を根本的に解決しようとして、その第1歩がイラク戦争であるというのが明確になってきました。 イスラエルとアラブ諸国との間の紛争は、既に単なる会談だけで済むようなものではなくなってきています。 クリントン前大統領が任期間際に会談を設定して何とか先に進めようとしましたが、結局何も起こりませんでした。 ブッシュ政権は、中東の国家をアメリカ式の民主主義国家に替えてしまって、本当の中東の安定を得ると言う壮大な計画を実行に移そうとしているように見えます。 その前では、大量破壊兵器が見つかろうとどうなろうと、金正日が何をやろうとそれほど大きい問題ではないのかも知れません。 国連でいくらゴチャゴチャ議論しても、中東の平和安定を実現出来るのはアメリカしかいませんし、やらなければならないと思っているのでしょう。
アメリカ軍は来ていない、と言うイラク情報相の声が聞こえます
画像をクリックするといつかTVで見た声が聞こえます。
"We will slaughter them all!"
"They're not even [within] 100 miles [of Baghdad]"
"No I am not scared and neither should you be."
"There are no American infidels in Baghdad. Never!"


イラク戦争が短期に終わると経済は上向く、との事前の観測にも関わらず、世界のマーケットはピリッとしません。 原油価格は下がらず、ドルは上がらず、株式もイマイチです。 さらには中国香港を中心としたSARS新型肺炎の影響がこれから出てくると言う状況で、明るさが見えません。 日本は相変わらずで株価は最安値を更新しつづけ、7000円割れ、6000円割れも心配するようになってきました。 銀行はだぶついたキャッシュで国債を買いまくり、1%を大きく切る金利で、国債は暴騰していて国債バブルと言われているわけです。 これではいくら問題があるというインフレターゲットを設定しようと思っても、インフレになって困るのは銀行自身ですから、力が入らず、現状肯定型になってしまいます。 国債の金利は結局は税金でまかなうので、税金を銀行に注入しているのと同じです。 いずれにしてもいろいろな原資は税金しかありませんから、これをどう使うかです。 現状では日銀が増やしたお金で、銀行は貸出を増やすのでなく、リスクが最も低いと思われる国債を買って、政府にお金を回しているだけです。 結局国債の利息を税金で払って日銀のお札を政府に回してるだけで、結局は日銀の国債直接引き受けと同じ事でしょう。 その間に税金を銀行に注入している訳で、何ら生産的な活動にお金が回っているわけでもありません。

これから人口が減少に向かうことや、国債の暴騰で分かるように、如何にバブルであっても今後10年間はデフレが続くとマーケットが見ている訳などで、少なくともここ4-5年は大きな変化は期待できないと言うことでしょう。 アメリカでは土地バブルがはじけようとしており、日本のバブルよりも軽症でしょうが、それなりに影響は大きくあるでしょう。 イラク復興のこれからにも依存しますが、復活した双子の赤字の影響も大きく、世界的にはまだまだ混乱が続くと見て良いと思います。


今月の読み物は、イラク戦争特集として「ブッシュの戦争」ボブ ウッドワード (著), 伏見 威蕃 (翻訳) 価格:¥2,200 です。 少し前に書かれたので、イラク戦争とはあんまり関係なく、9.11同時多発テロ後の3か月間に焦点を絞っています。 主要閣僚はともかく、補佐官のコンドリーザ・ライスの役割りなど、ものすごく現実感があります。 読みものとしては少々タイミングが遅い気がしますが、イラク戦争も終結した今、落ち着いてユックリ読んで見るのも面白いと思います。

アメリカはアフガニスタンでの戦争の準備を進め、対イラク先制攻撃に向けて動きだし、国土防衛を強化し、潤沢な資金を得たCIAが世界中でテロとの見えない戦争を開始した。文体はまさにウッドワードそのもの。重要人物と会える立場を存分に生かし、ニュースの裏側で繰り広げられる権力闘争や意思決定のプロセスを、ほぼ1日ごとに詳しく説明していく。ウッドワードは執筆にあたって100人以上にインタビューを行ってテープに録音した(その中には匿名のものもある)。大統領と4時間に及ぶ独占インタビューを行い、閣僚会議のメモや、機密扱いとされた報告書にも目を通している。(Amazon書評より)





4月1日
今月の話題は何と言ってもイラク戦争でしょう。 1991年から12年ぶりのブッシュ親子による戦争という事や、ネオコンと言われている宗教に裏打ちされた新保守主義の台頭などや国連の行き詰まりなど、いろいろ考えさせられる出来事です。 戦争を痛烈に皮肉ったMAD MAGAZINのポスターが国会内で評判になったそうです。 オリジナルと比較すると思わず笑ってしまいます。 少し前の話なので既にインターネットでは見れないので、ご覧あれ。 Attack of the clones が Clone of the attack になっていたりキャプションが面白い。

戦前の反省から、完全に宗教とは関係なくなった日本の政治と比べて、アメリカの政治にはまだまだ宗教色、それもキリスト教やユダヤ教の影響が強く見られます。 何もブッシュ大統領だけが宗教色が強いのではありません。 例えばアメリカの1ドル紙幣をしげしげと眺めてみると、いろんな事がわかります。 たかが1ドルと馬鹿にするなかれ。 国の通貨の基本単位の紙幣ですから、どこかのアルミコインとは違って他の20ドル紙幣などに比べて格段に凝っています。

まず第1にアメリカの国璽が裏に印刷されています。 紙幣の裏の右側に押印されている国璽は翼を広げ、つめを伸ばしたアメリカの白頭の鷲です。鷲の頭の上は13の星をいただく栄光がデザインされています(13の数は最初の13州を意味しています)。 右の爪は平和を象徴する13枚の葉が付いたオリーブの枝を掴み、左の爪は戦争を象徴する13本の矢を掴んでいます。 オリーブの枝の方に向けられ白頭の頭は平和を願うことを意味しています。 鷲の胸をかばう13本の縞が入った楯は1つの国を象徴しています。 楯の上部は議会を、白頭の頭は行政府を、そして尻尾の9枚の羽は最高裁を表しています。 鷲のくちばしのリボンはラテン語のモットーである"E Pluribus Unum (13文字)つまりたくさんの中から選ばれた1つという意味です。

紙幣の左側は国璽の裏側でピラミッドが描かれていて、強さと忍耐力を象徴しています。未完成のピラミッドは成長と完璧さを求めてたゆまない努力をする姿勢を象徴しています。栄光に輝くピラミッドの先の三角部分の目は永遠の神の目を象徴し、神聖なる紙の導きを暗示し、物質の上に精神を置くことを意味しています。ピラミッドの頂点には13文字のラテン語のモットー"Annuit Coeptis"が書かれています。これは「神はわれわれの約束に恵みを与える(He (God) has favored our undertakings)」と言う意味です。ピラミッドの底部にはローマ数字で1776と記されています。その下に"Novus Ordo Seclorum" 「新しい世界の秩序(A new order of the ages)」というモットーが書かれています。 さらには真ん中に In God We Trust とモットーが印刷されており、この印刷は法律で決められているとの事。

表の戦争とは別にサイバー戦争も激しさを増しています。 現在のところ、米軍やイラク軍が軍事行動の一環としてネットワーク戦争を仕掛けた結果生じたものではなく、個人のハッカーが自らのメッセージを伝えようとしているものが多いようです。 ハッカーは3つのグループに大別できます。 米国への愛国心に燃えるハッカー。  イラク戦争に参戦したいが、ネットワーク上で仮想敵を攻撃する以外に手段を持たない者です。彼らは、イラク大使館のメールサーバーやイラク企業のWebサイトにDDoS攻撃(分散型DoS攻撃)を仕掛ける可能性があります。

次は世界中のイスラム系過激派グループ。 米国に報復するために、米軍事組織が運用するWebサイトを中心として、米国系サイトを攻撃しています。 最後は平和活動家。 反米、反イラクの立場ではなく、戦争自体に抗議しています。たとえば、戦争反対メッセージを発信する数種類のコンピュータウィルスがすでに発見されています。平和活動家は今回の戦争を契機として戦争反対を訴えています。

この他にはイラク戦争をめぐって発信されたウィルスも出回っています。 2002年12月17日発見の Liotenは、Iraq_Oilとも呼ばれておりWindowsの共有フォルダーを介して感染するネットワーク・ワームです。 最近では2003年3月12日発見の Prune 。 2003年3月17日発見のGandaなどがあり、様々な題名と内容のE-Mailを使って感染しますが、そのうちのいくつかは直接イラク戦争に言及しています。 変わったところでは、ウサマ・ビン・ラディンのLadenという綴りを逆にした「Nedal」や「Blebla」などのウィルスがあるようです。

イラク戦争に関連したサイト改ざんも、ものすごく増えています。 米国、イラク、または戦争自体に抗議するためのWebサイト改ざんです。 Webサイトの改ざんは、米国がイラクへの武力攻撃を開始する48時間前から起き始め、すでに数百件の事例が報告されています。 一説によると、1日あたり約2,500件の改ざん例が報告されています。予想にたがわず、米軍関連のサイトが標的にされています。ただし、ハッキングの標的は、戦争当事国に限定されません。ハッカーは抗議活動を広範囲に展開するため、あらゆる国を標的にしています。

今回のケースでは、当然ながら、軍事組織を始めとする米当局が標的になっています。しかし、米当局のサイトで実際に検証された改ざん例はごく少数です。米当局は、開戦前から多数の攻撃を予測し、事前に対策を講じていたためです。これらのサイトでは、管理者が改ざん攻撃を仕掛けるハッカーグループによるアクセスをブロックしています。そのため、米国系サイトの改ざんは、多くが未確認の状態です。あるハッカーグループは、www.whitehouse.gov の改ざんに成功したと主張しています。ホワイトハウスのサイトは素早く修復されたため、実際に改ざんされたコンテンツは確認できませんでした。

今月の読み物はレッドドラゴン。 映画で有名になりましたが、実は私は知らずに映画を見に行きました。 それも英語で。 結局訳が分からないで見終わりました。 友人に言うとあれはよい映画だ、と言うばかりでさっぱり分かりませんでしたが、その後いろいろ見聞きすると、この筋では有名な「殺人鬼レクター博士」のシリーズで、その最新作との事。 本来の原作は第1作だそうですが、シナリオで直して最新作としているとの事。 原作では無いレクター博士を逮捕する話が挿入されています。 その前のシリーズは先日TVで放映された「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」があります。 こう言う予備知識があるとレッドドラゴンを見ても十分楽しめると言うことが後で分かりました。

レッド・ドラゴン 決定版〈上下〉ハヤカワ文庫NV トマス ハリス (著), 小倉 多加志 (翻訳) 価格:各々¥762。
レッド・ドラゴン―シナリオ・ブック 新潮文庫 トマス ハリス (著), Ted Tally (原著), 高見 浩 (翻訳) 価格:¥552

ただ、個人的な趣味を言うと、噛み付くとか人肉を食べるとかと言うのは日本人にはゲテモノ感が抜けません。 確かに原作も映画も良く出来ているとは思いますが、チト気持ちが悪い。 アメリカのホラー物が日本であんまり受けないのと同じでしょう。 ただ原作、映画の出来の良さは流石ですので、原作の本とシナリオ、映画を見れば、このシリーズのファンが多くいることは実感できるでしょう。

”人食いハンニバル”と呼ばれる天才精神科医のハンニバル・レクター博士を、名優アンソニー・ホプキンスがセンセーショナルに演じて早11年。「羊たちの沈黙」「ハンニバル」に続く、レクター・シリーズ第3弾がこの「レッド・ドラゴン」だ。本作は元々、記念すべきレクター博士初登場の「刑事グラハム/凍りついた欲望」というトマス・ハリス原作の映画として世に出ていた。これをレクター・シリーズとして成功させたスタッフ、キャストが再結集して「レッド・ドラゴン」として完全リメイクしたというわけだ。したがって時代背景としては「羊たちの沈黙」より少し以前である。”カリスマ殺人鬼”レクター博士の狂気の歴史を辿る経緯で、この猟奇的な怪物の全貌が明らかになっていくのだ。

一方、本作ではもう一人の連続殺人鬼が登場する。背中に紅き竜(レッド・ドラゴン)を刺青している”咬み付き魔”だ。なんと彼はレクター博士を崇拝し、被害者の目に鏡を埋めるという猟奇殺人事件を繰り返しているのだ。この事件を阻止するためにFBIに呼び戻された元捜査官が、エドワード・ノートン扮するウィル・グレアム。彼はかつて良き助言者だったレクター博士を逮捕した過去を持ち、その時に精神的ダメージを負って現役を引退していた。が、事件を解決するためには監禁中のレクターのプロファイリングが不可欠である事態に直面し、かつレクター博士が唯一認めているのが他ならないグレアム自身だったわけだ。こうしてレクター博士を介在して、”咬み付き魔”とグレアムの運命的な三角関係を基軸にストーリーが展開していく。(映画生活より)






3月2日
今回は一度書いたものを間違って消してしまって2回書いています。 今週末は新幹線の運転手の居眠りと航空管制コンピュータのダウンでニュースは埋まっています。 居眠りと言えば当方も身に覚えがあって偉そうには言えませんが、20分近くも眠っていたのは何か具合が悪いのか、またそのせいで薬を服用していたのか、のどちらかでしょう。 さらには、その後も単独で運転していたと言うおまけも付いてまたまた不祥事になりそうです。
居眠りと言えば、若い頃に突然自動車が前からドンドン来るのでビックリしてハンドルを慌てて左に切ったのですが、よく考えるとその時に眠ってしまって車が自然とセンタラインに寄って行って越えたのです。 その時もう少しタイミングが早く大型トラックでも来ていたら。ここでこうやって小文を書いていることも無くなったわけで、後で考えるとぞっとします。 この他にも人には言えないような失敗をいろいろやっています。 アメリカでは当然に時差ぼけになるのでいつも眠い状態が続きます。 特に車を運転しているときに限って眠くなるんですね。 いつかハッと気が付くと車が止まっているので、事故でも起こして止まっているのか、と自分の手を見たり、体を動かしてみたのですが、どうと言う事はない。 良く良く思い出してみたら、眠くなって車を路肩に止めたとたんに眠ってしまったのです。 別のときでも路肩に止めて眠っているとハイウエイパトロールに起こされてしまいました。 どんな人間がどのような理由で横になっているのか、パトロールも分かりませんので、ビクビクで尋ねてきましたが、とにかく路肩に停車するのは違法だと言うことでほうほうの体で車を発進させました。

この他にも、セミナーで寝てしまい、隣の人に起こされたとか、食事をしながら寝てしまい、自分の持っていた食器が落ちるゴトンと言う音で目が覚めたとか、眠れない夜もあるのに何故こんなに簡単に寝れるのか自分でも不思議になることが良くあります。

航空管制コンピュータの問題は、詳細な情報はまだありませんが、どうも2重で持っているコンピュータの両方に修正パッチプログラムを入れたようで、この修正パッチにバグがあって、両方のコンピュータがあえなく同時にダウンしたそうです。 某コンピュータ専門雑誌の格好の記事になりそうですが、航空管制と言う重要なシステムが単なる2重システムで構成されている事にビックリしました。

この時の空港で待たされている人たちのコメントは、会議や結婚式に遅れるとかコンピュータ任せでは良くない、と言うようなものでしたが、飛行機は必ず遅れるものであるという事と、2分に1回とか言うような過密の離発着スケジュールはコンピュータの助けなしでは不可能です。 アメリカでは良く飛行機が遅れたり飛ばなかったりします。 特に冬場は北部、UAのハブのシカゴではまともに飛行機が飛んだら珍しいくらい延着、キャンセルがあります。 登場率の低いフライトはこう言うときに真っ先にキャンセルになります。 この時の代替のフライトを確保するのが一番の仕事になり、交渉力が本当に要求されます。 また、北部はそうでも南部は問題ないかというと、そうではなくて、機体を使い回しするので、北部からの機体が来なければ出発するわけにも行かず、天候は全く問題ないのに機体が来ないと言う事も良くあります。

良く利用していた太平洋路線でフライトが遅れではなくて、アメリカ出発がキャンセルになったのは1回だけでした。 結局その次の朝、全く関係の無い時刻に出発したのですが、たまたま、その時は例のサンマイクロのスコットマクナリーCEOとの打合せを京都でやることになっていて、結局実現しませんでした。 飛行機の遅れがよくあるアメリカでは珍しい事ではなくて、出たくない会議の言い訳に使っているのではないかと思うほど遅れやキャンセルが沢山あります。

問題の管制コンピュータは、本来の重要性から言って3重くらいのシステムにして、ハードはともかくソフトは一つの仕様書から全く別々に開発を行うべきです。 既に30年以上経ちましたが、あのアポロ宇宙船のコンピュータは5重システムで、同じ仕様書からソフトを5つ作ったそうです。 今回の問題は、修正パッチに問題があったのはともかく、それを同時に2つのシステムに入れたことが大きな間違いでしょう。 従って、今回の問題は技術問題ではなくて純粋に管理問題であろうと思われます。 ロケットの失敗や原発の事故などを見ても最近の現場の技術者はどこか抽象的過ぎるような感じがします。

このようなことで、今日はニュース欄をあちこち見ることがあったのですが、最近のITの方向を示すような記事がまとめてあったので紹介しておきます。 まず「東西NTTの電話・専用線の減収止まらず 2003年度はフレッツと合理化で穴埋め」と言う記事。 2年前の3月号の本欄、その前の10月にもコメントをしていますが、5年くらいで固定電話はなくなってしまうのではないか、マイラインなどと言う無駄なことにエネルギーを費やすな、と言うことを書いています。  音声収入は2002年度に比べて,NTT東日本が1290億円,NTT西日本が1000億円も減る見通し。 総収入はNTT東日本が1290億円,NTT西日本が960億円の減収となる。もっとも合理化の効果で費用を削減するため,2003年度の経常利益はNTT東日本が370億円,NTT西日本が10億円になる見込みだそうです。 片や 2003年度に加入者数が伸びる見込みなのは,ADSLやFTTHなどIP系のサービスだけ。IP系サービスは,NTT東日本が2002年度より720億円増の1610億円,NTT西日本が2002年度より660億円増の1410億円に引き上げる計画だそうな。 地盤沈下は確実に起きています。

この次は「東西NTTの県間通信参入,総務省の認可を巡って新電電に渦巻く不満と脱力感」の記事。 なりふり構わないNTTの現状防衛と、それと何ら変わらない新電電の反発。こんなことで争っていないで少し先を見た戦略が今の日本には必要とされています。

さらに駄目押しの「国内ブロードバンド回線総数が830万超に FTTHとCATVネットは単月加入が減少」の記事。総務省が2月28日に発表した速報値によると,1月末時点の国内のブロードバンド回線の総数は834万4955に。FTTHは1カ月間で2万6883回線増加し,累積で23万3072回線。CATVインターネットは,3万8000回線の増加で199万2000回線。 一方,1月末時点のxDSLの加入者数は累積回線数は611万9883。1カ月で約47万加入増加。と言うことでやはりADSLが伸びてます。 本命のFTTHは見る影も無い。 最近のTVコマーシャルで関西のプロバイダが月4,000円を打ち出しましたが、これが起爆薬になるか、この価格が定着するのでは、と様子を窺いたくなります。

今月の読み物は、ちょっと古くなってしまったのですが、「通貨が堕落するとき」木村 剛 著 ¥1,800。 著者はTVでおなじみ、竹中大臣のブレーンで、あいつだけは絶対に入れるなと自民党幹部に言わせた人。 今読んでもあんまり違和感が無い、と言うことは日本経済の回復がほとんど進展していないと言うことでしょう。

そごう問題の勃発を予言していたこの書『通貨が堕落するとき』は、日本の金融システムの腐敗・堕落ぶりをあますところなく描き、政治家・官僚・経営者の心胆を寒からしめたのです。現在焦点となっている新生銀行(旧・日本長期信用銀行)を巡る契約の“深層”にも鋭く迫っています

物語は2003年、地方に飛ばされた大蔵官僚へのインタビューから始まります。金融システムを安定させるという名目で用意された70兆円はすでにきれいになくなっています。さらには日本に対する国際的信用も地に落ちてしまっていました。信用こそが金融システムを支える全てにもかかわらず、この国は手をこまねいて信用が崩壊するに任せてしまったのです。この間、政財官の深奥で何が行われていたのか、冒頭の大蔵官僚を主人公に崩壊過程がくっきりと描き出されていきます。(書評より)







2月2日
先月の1月25日にお隣の韓国で大規模なウイルス(ワーム)被害があって、起こったのが25日が土曜日の午後だったため、経済活動への影響は最小限で済んだようですが、これが平日だったら韓国経済は麻痺状態に陥ったであろうというのが、大方の見方です。 朝鮮半島やアラブでの緊張が高まっている折、サイバーテロでは無いか?と言う意見がありましたが、その確証は無いようです。 さらには、SQLスラマーは敵が電子攻撃を仕掛けてきた場合の影響をテストするために米国政府が作成したのだという噂も流れたほどです。

韓国以外では、アジアや欧州の通信システムに障害が起きたほか、北米では現金自動預払機(ATM)が一時使えなくなった銀行もある。 バンク・オブ・アメリカ銀行では事実上すべてのATMがダウンし、いくつかの航空会社の予約システムもダウンしたとの事。 今回のワームに感染したコンピューターは、全世界で少なくとも24万7000台という数字もあります。

今回のウイルスは一般のメールで送りつけられて、個人やPCそのものに被害が出るというものではなくて、マイクロソフトのデータベース用ソフトのSQL2000サーバーの脆弱性を突いて多数の複製を他のサーバーに送り込んで処理能力を超えてしまい、ネットワーク全体の麻痺を狙うものです(サービス運用妨害 =DoS= 攻撃と言います)。 お互いのサーバーがお互いの処理を受け持つ、インターネットならではの現象です。

当然マイクロソフトは、7月に修正プログラムを発表していますが、全てのサーバーに対応できているとは限らず、むしろ修正プログラムを発表したときに問題点を公表するのですから少し理解のある技術者ならウイルスを考えるのは容易でしょう。 今回の被害も全世界がターゲットになえいますが、韓国だけに被害が集中したのは、この修正プログラムをこまめに実施しているかどうかでしょう。 日本ではSQLサーバーは大企業でしか使われていないので、その管理レベルが高かったこと、また外部接続している数も少ないのでたいした被害にならなかったものと思いますが、見方によっては、まだインターネットの利用形態が低いのかも知れません。 残念なことにインターネットの利用レベルが上がると、このようなウイルス被害が大きくなる傾向にあります。

最近は日本でも常時接続が大幅に増えています。 また絶対数では世界2位の接続数がありますので、今回サーバーで起こった事が常時接続している個人のPCで起こったら、インターネットを完全に麻痺させることは容易でしょう。 同じADSLでもダイアルアップしいるものは比較的安全ですが、マンションのネットワークや無線ネットワークなどでサブドメインを共有している場合は極めて危険です。 一度自分のPCでネットワーク接続を全部調べてください。 自分の知らないPCが見えたらすぐに接続を切りましょう。

チョット前まではデスクトップにマイネットワークと言うアイコンがあって簡単に調べられたのですが、最近の例えば XPですと、「使い易くした」と言うことでしょうが、どこかに隠してしまっているので、アイコンを探し出すのが面倒です。 ネットワーク接続の中にありますので、根気良く探してみてください。

経産省が今回のスラマー被害を総括してレポートを出しました。 日本では大きな感染や、通信インフラを脅かすような重大な被害は報告されていないようで、情報処理振興事業協会(IPA)への届け出は、攻撃を感知したのが6件で、うち実際に感染したのは1件だけだったようです。一方、被害が大きかった韓国については (1)個人が公開しているインターネット上のサーバーが多い (2)狙われたマイクロソフトSQLサーバー2000が多く導入されている (3)修正プログラムを適用していないコンピューターが多かった (4)ファイヤーウォールを構築していないサイトが多かった−−ことを挙げています。

専門家の意見によると、今回のワームのソースコードは、イギリスのコンピューター研究者が数ヵ月前に公開したコードを、後に中国のハッカーが改変したらしいとの事。 当初これらのコードを公開したのは、ハッカーがプログラムをどのように使ってシステムを攻撃するかを、コンピューター管理者に理解してもらうためだったと言いますが、コードは改変され、中国のハッカーグループが公開したようです。 今回の件は中国のハッカー組織が今回の攻撃をしかけたかどうかは断定できないようで、いずれにしても犯人を突き止めるのは至難の業でしょう。 ちなみに米国ではワームの作者は反テロリズム法に基づいて、最高で終身刑となる可能性があるという事です。

2000年5月にフィリピンのコンピュータ学生放った『I LOVE YOU』ワームは記憶に新しいところです。 このワームのコードには彼の在籍学校に関する情報が含まれていたので、米国の捜査官たちは容疑者を24時間以内に特定できましたが、今回はそのような痕跡は見当たらないようです。

米連邦捜査局(FBI)とSANS研究所はこのほど、毎年1回更新しているセキュリティー上の脅威トップ20リストの最新版を作成しました。 ウィンドウズ関連の主な脆弱性には、『SQLサーバー』の欠陥、ネットワーク共有の無防備さ、パスワード保護の弱さなどが挙げられています。 このような調査に基づく対策は、例えば米航空宇宙局(NASA)では、2000年の第3四半期、NASAに対して試みられたハッキングのうち24%強がシステム内に侵入したが、システムの欠陥を修正したところ、2001年末までに成功率はわずか1%にまで下がったと言います。

今月の読み物は、「ペンローズのねじれた四次元」―時空をつくるツイスターの不思議、ブルーバックス、竹内 薫 (著)、940円なり。 ホーキングが有名ですが、実力的にはペンローズはそれの上を行きます。 これが天才というものなのか、最近のノーベル賞のあっけなさに比べて、到底足元にも及ばないと言う感じです。 純粋の数学者は、ノーベルが数学者と仲が悪かったと言うことらしいですが、何故かノーベル賞の対象にならず、従ってペンローズのような半分物理学者は何にももらえないのでは無いかと他人事ながら心配になります。

ホーキングと並ぶ数理物理学の雄、ロジャー・ペンローズの紡ぐ超難解な世界を、幾分かでもわかった気にさせるという意味では空前絶後の名著。〈スピン〉や〈ツイスター〉などの超最先端の理論まで到達するとさすがに説明が重くなるとしても、〈相対性理論〉〈量子力学〉〈ブラックホール〉〈特異点〉などの刺激的な理論の案内としては、これは画期的にわかりやすく面白い。すべては著者の筆力のたまものだろう。しかしそれでもチンプンカンプンの部分が残るということは、究極の世界像とは、一般の人間には全く理解できないものになってしまうのか、という悲しい気分にもさせられる。(書評から引用、守屋淳)

素粒子は粒子と波の両方の性質を持つ、と教えられていますが、実際に2つのスリットを通して電子をポツポツと送ってみると、ポツポツの時間差にも関わらず、スリットの向こうに置いた衝立には、数を多く送ると干渉縞が現れるのです。 確か日立かどこかの研究者が実際にやってみてそうなるそうです。 衝立に当ったときは点になるので、そのときは粒子であることは間違いないのですが、スリットのどちらを通ったか、と言うことに関しては、波としてどちら「も」通ったと言うしかないようです。 粒子になる時点では「波束の収束」と言うのが起こっており、数学的には絶対値を取れば良いと学校では教わりましたが、実態は全く分からず、学者の間でもまだ意見が異なるとの事で少々安心しました。

この収束がいつ起こるのか、と言うのが大きな問題で、人間の意識で生じると言うのは、コンピュータの元を作ったフォンノイマンですが、まさかと素人の私でも思います。 ペンローズの仮説は素粒子の数が多くなると収束が起こる、素粒子単体でも長時間(何千万年)もたったら収束する、と言うもので、何となく理解できるものです。 しかしそのペンローズも量子コンピュータで機械にも意識が持てるという主張をしているようで、学者は偉くなると意識の問題を取り上げたくなるようです。 ちなみに量子効果で一度いっしょにした上で、2つの離れた素粒子間で超高速の情報交換が行われると言うのは、あのアインシュタインが量子力学の矛盾として取り上げたのですが、実際に観測されているようです。 その研究が経産省の補助金の対象になっていたのでビックリしたことがあります。






1月1日
あけましておめでとうございます。 とうとう2003年です。 昨年の正月にはあんまり経済状況の改善は望めませんでしたが、ここまで株価が落ちるとは誰も予想しなかったのでは無いでしょうか。 アメリカのデフレ状況もだんだんと深刻になって来て、どう望んでも今年の改善は期待できません。 ちなみに世の中に出回っているお札(キャッシュ)は今年の末で75兆円だそうです。 これは人口を1億とすると赤ん坊を含めて全員が75万円づつお札を持っている(預金ではない)計算になって、4人家族ですと300万円財布に入っていることになります。 そんなお金は無いので、恐らくどこかに溜まっているのでしょう。 ペイオフ解禁は延期されましたが、預金を含めてもっとも安全で利回りの実質利回りの良いのは、箪笥預金ということになります。

恒例のIT世界の2003年の予測をやってみましょう。ADSLが12Mまで行って、おかげで世界で一番安いブロードバンドインフラが使えるようになり、2002年には普及も500万を超えそうですが、それでも普及率という点ではお隣の韓国に負けてしまいます。 しかし、いずれにしても絶対数では世界で特にADSLではトップですから、この上でのビジネスはますます盛んになっていくでしょう。

一服感のあるADSLですが、PCの世界ではタブレットPCの分野でまたまた進展がありそうです。さらにはPDAからも参入があって、とうとうPCとPDAの垣根が取り払われようとしています。 タブレットPCのアイデアは昔からあって、いつか紹介した1990年代初めにGOと言うコンピュータがあったのですが、これがタブレットPCです。 当時はCPUチップの速度が追いつかなかったので失敗してしまいましたが、アイデアはずっと生き続けています。 何といっても大きな要素はCUPのクロックが劇的に向上したことです。 最近ではデスクトップでは何と2.4GHzのクロックを持つものが出てきています。 これは最近盛んなBlueToothの電波の周波数です。 ケータイで使っている電波よりも遥かに高い周波数で、私が学生のころはこの周波数で通信が出来たらそれがそのまま日本記録となる、と言う様な代物です。

またタブレットPCの大きな問題点の手書き文字入力も、1996年に現在のPalm社がPilotと言う製品を出して、それが受け入れられたのが大きなキッカケだったと思います。 当時のビジネスマンはほとんどがこれを持っていて、スケジュールなどをこれに入れる光景が良く見られたものです。 ミソは速記風のPCが認識しやすい略字体で入れるところにありました。 26文字しかない英文ならではですが、これが一種のゲーム感覚で覚えてしまうのです。 さらには認識せずにそのまま取り込んでしまう事も行われて、実用と言う点では一応の水準に達しました。 こう言う背景があって今再びタブレットPCとなったのです。 一部ではその成功を疑問視する声もありますが、その大きさはともかく、文字認識の点では問題はクリアされたのではないでしょうか。 しかし、いずれにしても大きさは大きいですね。 また通常のノートPCが最近安くなっている事と反して少し高価過ぎるような気がします。 OQOという会社では、手のひらに乗る超小型のPCを開発していて、今年早々には出荷されるようです。 OSはWindows-XPを用いていて、そういう意味ではPCの分野に属する製品です。 ついでに、ここのWebページは必見。 なかなか軽い割には視覚に訴えるサイト作りで今後を占う意味では参考になります。

こう言う点を突いて、老舗のPDAメーカーも狼煙を上げました。 ザウルスのシャープです。 その決め手は「連続粒界結晶シリコン」(CGシリコン)による表示にあります。 PDAサイズで一昔前の640x480ドットの表示が可能になり、PCとの垣根が無くなった訳です。 従って、これを使ったPDAは現時点では売り切れが続出しているとのことです。 タブレットPCで一般的な表示とキーボードを回転させて一体にする、言うところまで同じで後はその小ささと安さです。表示部は従来のアモルファスシリコンや多結晶シリコンでは難しかった,周辺回路などを同一パネル上に形成し、小型化が可能になったのです。

この手法は20年ほど前の電卓戦争を彷彿とさせます。 競合メーカーはローコスト化生産だけを追求しましたが、シャープは液晶の一体生産、ワンボード化を追求しました。 この結果、一時的には大きな開発投資のためにシェアは落としましたが、最後にはトップメーカーに返り咲きました。 同じようにこのPCとPADの争いも最後は研究開発に投資を行ったPDAに軍配が上がるのではないでしょうか。 問題のOSもLinuxを使っており、前回にご紹介したように、Linux上でのアプリ開発も進んでおり、いずれはマイクロソフトで作ったデータをそのまま処理できる非マイクロソフトのPCが登場する可能性がますます大きくなってきました。 CPUもメーカーはインテルながら、伝統的なペンティアム系列ではなくて、以前に買収したイギリスのARM系列のものを使っているようで、将来的には非インテルがメインになる可能性も出てきました。

さらにそのPDAに迫るのがケータイです。 J-Phone対応の東芝製「J-T08」は、320×240ピクセル(QVGA)/26万色表示の2.2型「スーパーファインポリシリコンTFT液晶」を搭載。PDAに匹敵する最大306文字(18文字×17行)を表示可能だ。背面に1型のサブディスプレイ(6万5536色STN・80×60ピクセル)も備えています。 31万画素のカメラももちろん備えて、従来は外付けだった自動的にオンになるオートフラッシュも備えていてほとんどカメラといって良いでしょう。

通信の分野では現在主流の802.11b に代わって 802.11g が主流となるでしょう。 11bと互換があり、しかも速度は22Mbpsと高速で通信距離も大幅に延びるようです。 高速の切り札といわれていた802.11a は会社間の互換性が取り難いのと、54Mbpsもの速度は当面必要ないということでしょう。 FTTH(光ファイバ)が使えたらこれは100Mbpsですから使えそうですが、それを生かせるコンテンツが無いのと通信路のどこかでボトルネックになって、トータルには100Mbpsも出なくて、せいぜい10Mbpsと言うところなので 11b もしくは11g で良いと言うことです。 また既に持っている無線カードが使えるのも良いと思います。 速度に関しては、仕様上はなるほど11Mbpsと22Mbpsの差ですが、11bは距離が少し離れると2Mbps程度に落ちてしまうので、その低下が少ない 11g が有効と言う訳です。

2003年1月の読み物は内容に関係なく、爽やかな冬のイメージで「凛冽の宙」。 ちなみに辞書によると凛冽とは「寒さが厳しく身にしみいるさま」だそうです。 かなりの誇張があって、ミーティングの場面なのでは、笑ってしまいそうになる場面も出てきますが、それなりに肩が凝らずにアッサリと読めます。

金融にあまり関心のない人でも、「日本国債ってヤバイらしい」ということを耳にするきっかけを作ったベストセラー小説「日本国債」の著者、幸田真音の本です。今回の小説「凛冽の宙(りんれつのそら)」では日本の不良債権処理ビジネスを取り上げています。
金融ビジネスの内側を極めてリアルに描きながらも、登場人物の人間模様(当然、男女モノ)についての話題が随所に散りばめられているためか、「堅い小説」の雰囲気が感じられない非常に読みやすい小説です。また、(主役ではないですが)どう考えてもこれはマネ○○○証券の松○社長がモデルになっていると思われる人物も登場しています。

「当たり前のことを、素直に当たり前だと感じる」という単純なことこそ大切であると教えてくれる本でもあります。 <アセットケア 書評より>