シリコンパレーだより(5)
アメリカは契約社会/そして非常に合理的な面もあります
目が離せないワークステーション業界のこの秋の動き!
EWS業界の雌サンマイクロシステムズ社(SUN)も、前年度(アメリカの年度は6月に終了)にとうとう大赤字を出し、新年度の第1四半期も赤字は避けられない見通しで、HP社のアポロ社買収とあわせて、業界再編成のキッカケとなるかと、大いに注目されています。各社も新機種をどんどん投入してきていますから、この秋からの各ショウには目が離せません。
最大の目玉はIBMで、評判の悪い6100の後継機を「Cray on The Desk」(Crayはスーパーコンピュータ)の合言葉で開発中とのことです。 HPは、日立と組んで新しいアークテクチャーのRlSCマシンを開発中ですし、DECは、現在のDECstationに命をかけています。 アポロ(HP)は、遅ればせながら $5,480 という超ローコスト機をヤケクソで出してきたようでずけど、結果は不明です。
SUNやIBMのクローン、はぴこる?!
SUNは調子が悪いと言いながらも、最新機種のSPARCstationは、なかなか良くできていますし、価格も安い!ハードウェアは、VMEボード大のマザーポードにASlCを使って全てのせています。 台湾や、韓国では、このクローンを作る計画が進んでいます。SUN自身も、ローエンド機を自社生産する気がないと言っていますし、日本ではSUNをOEMしている東芝がポータブル機を作って逆にSUNへOEMするそうでず。韓国のあるメ一カは現状のSPARCstationと同じものなら、$2,000 で出来ると豪語しているそうです。EWSもだんだん、IBMPC/ATと同じように、というか少なくとも同じぐらいの、ハード量で作れるようになってきました。
しかし、使用するソフトウェアは、IBM PC/AT とは比べものにならない位、複雑で大量です。さらに、RlSC、RlSCと騒ぐわりにはアブリケーションソフトが揃っていません。OS(オペレーティングシステム〉が同じなら、再コンパイルすれば良いように思えるのですが、もっとも進んでいるSUNの場合でも、SUN‐3用には、約2,000本のソフトがありますが、RlSCのSUN‐4用には、まだ500本しかありません。従って、RlSCベースのEWSの普及は、予測よりも大幅に遅れるとの見方もありますし、反面、それを吹き飛ばすほどの普及パワーがあるとも言われています。この辺の予測のやり方、戦略の立て方により、今後どのような変化がでてくるのか、予断を許しません。
さて、クローン開発とか言うと、SUNのようにオリジナルメーカが推進している場合(これは特例)を除き、知的所有権ともからんで、技術以外の法律問題が大変になってきます。IBM社は、IBM/PCのクローンがあらわれてIBM社の収益を圧迫し始めたとき、大いにあわてました。IBM社は、もともとPCの分野では後発でしたので、完全なオープンアーキテクチャ(全てを公開する)方式をとって、業界のリーダシップを取ることに成功しましたが、そのッケとしてクーロンメーカに悩まされることになったのです。この時、最後の防波堤にしたのは、BIOSと呼ばれるROMソフトでした。しかし、これもやがてフェニックス社がクリーンルーム方式という仕様を作るチームとそれをコーディングするチームを完全に分離する方式を考案することにより破られ、ついに完全なクローンメーカは、アメリカのメジャーなものだけで7社も存在するようになりました。
Appleのクーロンばない?!
ここで問題ですけど、「IBM社のPCの出荷台数より多い出荷台数を持つメーカはどこでしょう?」これは、言わずと知れたApple社です。それなら、そんなに多く出荷しているPCのクローンはあるが?と言えば、ほとんどありません。 私もこれに何年か前に気がついて、いろいろ調査してみましたが、特にこれと言った理由はなく、マーケットが少し小さいことと、Apple杜が知的所有権にうるさいということしかありませんでした。 現在は、これにチャレンジしている会社も少しあって、Apple社が保守用に売っている(アメリカのみ)BlOS ROMを使って、クローンを作っています。
台湾のあるメーカ(行ってみると社長以外全て日本人だった??〉は、この方式により、ラップトップ機を作っていました。原価を聞いて、クローンとしてはあんまり安くないという気がしましたが、つい最近、Apple社自身が出したラップトップ機(やけに高い)を見て、ひょっとするとうまく行くかもしれないと思うようになりました。 ちなみにこういう作り方(オリジナルのパーツを含んだやり方)を「クローン」に対比して、「サイボーグ」と言うのだそうですョ!
EWSの分野でも最近は、Look&Feel(操作感)がやかましく言われてきており、Apple社は、この分野で1歩先を行っていて、EWSの最大のテーマになっています。中にはApple社のLook&Feelを業界標準にしたら?という声もあり、Apple社自身が認めるかどうかは別にして、注目すべき所であります。
シリコンバレー発祥の地は、今や弁護士の天国!
こういうクローン開発ということになると、必須条件になるのが弁護士です。最近では、開発費用のうち弁護士費用が半分を超えることも珍しいことではなくなってきました。スタンフォード大学の南、Page Mill通りをはさんで、大きな双子ビルが建っていますが、このビルの住人は、半数が弁護士とのことです。土地が高いこともあってか、かつてのシリコンバレーの発祥の地のマウンテンビューは、もはや技術者の天国ではなくて弁護士の天国になってしまいました。
アメリカでは、チョットした公式の文書は、全て弁護士を通します。我々も技術的な間い合わせは除くとしても、責任の発生する恐れのある文書は必ず弁護士に1回は目を通してもらいます。契約社会であるアメリカでは、1回認めてしまうと守らなければなりませんし、もしそれが自分の「つもり」に反していても守らなけれぱ、ずぐに訴訟になってしまいます。 ハンコを押す「開発委託契約」みたいなものでも、チョット複雑なものはお互いの弁護士を従えて交渉のテーブルにつかねばならなかった!という経験もあります。
弁護士といえば、料金が高いことで有名ですが、シリコンバレーでは時間割り、$150〜$300 といった所でしょうか?高くつくのは、弁護士がアシスタントを使っている場合で、弁護士1人の料金は $200 ぐらいがマアマアの所でしょうか。これはそんなに高くないと思いますが、高くつくのは、ダラダラとミーティングしたり(世間話をしていてもチャージされる)、どういう点についてチェックして欲しいのか明確にしないで依頼したときなど、弁護士もよく分からないので、全ての場合について調べてしまうという風に、チャージされる金額が上がっていきます。
この間は、ミーティング時間がなくて飛行機の待ち時間がちょうど1時間あったので、その時にミーティングをやりました。時計をチラチラと見ながらの1時間でピッタシに終わりました。 内容も普通の2〜3時間分あったので、「理想的な弁護士の使い方やな」と自己満足に浸っておりました。
頭を使って賢く飛行機に乗りましょう!
飛行機の話が出たついでにその話をひとつ。アメリカの飛行機会社は、ほとんど「マイレッジなんとか」という制度を持っていて、これはある一定距離以上乗ると、アップグレード(エコノミーの料金でビジネスに乗れる)や無料チケットをくれるものです。 UA(ユナイテッド航空)のものはおそらく世界最大で、メンバーになるとその飛行記録はすべてファイルされていて、定期的にレポートやアップグレードチケットを送ってきます。ちなみにUAでは、5万マイル乗ると、日本−アメリカ間のエコノミークラスのチケットが、ただになります。日本−アメリカ間の拒離は 約5,000マイルですから、単純に計算すると5往復すれば次の1往復はタダということになり、結局約20%引きと同じ効果があります。 普通は、いろいろなポーナスマイルが加算されますので、3〜4往復で、1往復がタダになります。
日本の飛行機会社の場合は、この辺がまったくおそまつで、少なくとも日本に居住している人は、メンバーになれません(私は、強引に 『アメリカに住んでいる』 と主張してメンバーになりましたけど、結局は使ってません)。 もしなったとしても、日本発の無料チケットは、(公正取引委員会のせいだと言ってましたけど)発券できないそうです。 その代わりに景品をくれるそうです。この間、飛行機の構に座った人が、たまたま日本人だったので聞いてみたら、「この前まで乗っていたけど飽きた、UAのマイレッジの方がよい」と言ってました。
日本では発券できない無料チケットを、UAはどうやって発券しているかというと、ソウル発着の日本経由にして、初めと終わりのチケット(ソウル−日本間)を捨てるという違法(?)輸入チケットみたいなことをやっているようです。
日本の飛行機会社はこういうサービスを努力してやらないばかりか、アメリカでは最も安い航空券を、日本ではアメリカに比ぺて割高の航空券で売っています。 だから変則的な輸入チケットに対して、あんなに神経質になっているのです。
また、アメリカ国内の飛行機の料金体系はよくできていて、2週間以上前に買うと格安で乗れます。 そして、出発が近づくにつれてどんどん高くなっていき、出発直前になると本当の正規料金を払わねばなりません。 要するスケジュールをキッチリたてた人が得をするという、なんか諺のようなシステムになっていて、非常な合理性を感じますネ。
ちなみに、最近アメリカ国内の料金が改訂されまして、西−東海岸往復で $2,000ぐらいするようになりました。もちろんエコノミークラスで、日本アメリカ往復でも、$1,000 ちょっとというのですから大変な値上がりです。 この他にも、「VlSlT USA」という、日本発でのみ有効なアメリカ国内の格安周遊券もありますので、せいぜい頭を使って安く飛行機に乗るようにしましょう。
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