「今月のひとこと」の目次 毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。 2002年 12月 1日 11月 4日 10月 6日 9月 1日 8月 3日 7月 1日
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12月1日
今日はADSLが何故かストップしてしまって不便この上ないと言う感じで、今更ながらインターネットが生活に深く入り込んできている印象が強くなりました。 しょうがないのでFOMAのパケット通信を利用していますが、パケットと言うのは使ってみると結構便利で、接続の時間を気にせずに繋ぎっ放しで使えます。 PHSでは最近繋ぎっ放しと言うか定額のサービスも始まって、これも実質的には繋ぎっぱなしですね。

経済の方はと言うと株価も最安値をつけた後、日経平均で9000円を復活しましたが、以前は15000円を切ったら大変とか、12000円とか、10000円の壁とか言われたのですが、この頃では9000円に戻したらヤレヤレという感じで、このまま来年の3月、9月を迎えたら、またまた大混乱になるでしょう。 物価もドンドン下がって、このままだと最良の投資はタンス預金と言う事でしょう。 ますます経済の血液である現金が回らなくなっていきます。 後10年はこのような状況が続くと思わないといけないようになったのではないでしょうか。

物価と言えば、とうとう199ドルつまり約2万円のパソコンが登場したようです。 むろん表示のためのディスプレイは付属していませんが、本体は立派なPCです。 液晶のディスプレイが付いても250ドルぐらいで、何年か前に500ドルコンピュータを引っさげてオラクルがネットワークコンピュータを提唱しましたが、今やそれを下回るものが出てきたと言う事でしょう。 この時は小さなPCを意味する Thin Client と呼ばれて一時はブームになりました。 方やマイクロソフトタイプの伝統的なPCは Fat Client と呼ばれて時代遅れのレッテルを貼られてしまいました。 しかしマイクロソフトのマーケティングの力と、既に世の中に出ていたPCの数の威力でとうとう200ドルコンピュータが実現したのでしょう。

これくらいの値段になるとそのコストの中に占めるソフトウエアつまりOSの割合がものすごく大きくなるので、これをどうするかが問題となります。 この200ドルコンピュータは、OSとしてマイクロソフト(MS)ではなくてオープンソフトで有名なLinuxのWindows版であるLindowsを使っています。 Linuxがフリーであるのでこれも無料であろうと思ったのですが、どうも定価としては結構な値段がついているようです。 アプリケーションはMSのワードとかエクセルがそのまま動くそうです。 しかし当然のことながら名称やアプリが動く事に対してMSより訴訟を受けているとの事。 また会員制で専用のアプリも入手出来るようです。

巷ではエイズががが蔓延しているようですが、インターネットの世界でもウイルスやスパムメールが増えてきました。 ウイルスはサービスプロバイダのレベルでチェックされているようで、最近削除しました、と言う通知が頻繁に届きます。 この中には本当にウイルスであるものもありますが、どう見ても間違いであるようなものも含まれています。

方法としては、送信元のメールアドレスをブラックリストにして、それを元にチェックするもの。 しかし送り元を煩雑にでも変更すればすり抜けられます。 現にわずかに異なるメールアドレスで送りつけられているケースがあります。 最初の内はインターネットの世界を知るために受け付けていたのでのすが、最近は多くなった事と、内容も大体同じようなものになって来たので後は煩わしいだけになりました。 しょうがないので一度受け付けて後はルールで消去をしていますがこのルールを作るのが大変。 一発ではうまく行きません。 スパムソフトはこの辺を徹底的にやっているのでしょう。 最近また良く来るのはナイジェリアの元政府高官の名前でこちらの銀行口座を入手しようとするものです。ほとんど同じものがアチコチから送られてきます。 内容がほとんど同じなのですぐ分かるのですが、不幸の手紙風にアチコチに出回っているようです。 スパムメールを自分で排除したいのなら無料でダウンロード出来るサイトがあるようです。

まあウイルスに比べて実害は少ないので結構野放しみたいですね。ADSLの普及でダウンロードの時間を気にしなくて良くなったからでしょう。 ADSLを含めたインターネット接続に関する最近の調査結果では、普及率の点では10位以下ですが、絶対値では米国に続く第2位で流石は経済大国です。 ちなみに3位は何と中国です。 普及率は小さいものの沿岸部だけでも日本の総人口と変わらない市場があることを認識しておく必要があるでしょう。

今月の読みものは、趣向を変えてこんなものはいかがでしょう。 「ニセモノ師たち」中島誠之助著 講談社 1600円。 ご存じ、テレビ鑑定団の大御所。「いい仕事してますねぇ」の中島先生です。 テレビで見る語り口そのままの文章で、気軽に一気に読めます。 まあ一度読んだらそれで終わりですけど。 それにしてもいろいろな手口があるんですね。 骨董と言うのは本物と偽モノとの間で行われる一種のゲームなんですね。 そもそもこれで大儲けしようとするからで、何となく株の売買や宝くじに似ていると言うとい言い過ぎでしょうか。

骨董(こっとう)は投資にならない。プロでさえコイツは儲(もう)かると思ったものほど損をする。プロはキャンセルしないが、アマチュアはキャンセルする。素人は金の痛みが残らずに猜疑(さいぎ)心ばかりが残る。プロはいやおうなしに金の痛みを全身に背負う。この失敗は人間を鍛える。
本書は、興味本位の暴露話ではなく、TVで活躍するプロの骨董商が、きわめて真摯(しんし)に骨董の世界におけるニセモノの存在の意味にせまろうとするもの。徹頭徹尾、贋作(がんさく)に半生を捧(ささ)げた老人の話をはじめ、本当の「ニセモノ」のすごさにはただただ圧倒させられる。
ふつうの骨董商なら、自分が騙(だま)された経験は口が裂けても語らないだろうが、それをこのように白日の下に書く勇気は、おそらく強烈な自負と矜持(きょうじ)とに裏打ちされたものであり、骨董における「ニセモノ」の深さを、ここまで徹底的に描きだすことができた骨董商の存在は、この世界の成熟を示している。同じ著者の『古伊万里染付入門』などを愛読する評者としては、この新著に快哉(かいさい)を叫びたい。●評者・黒崎政男(東京女子大学教授)





11月4日
先月は久しぶりにアメリカに行ってきたので、何となく予定が詰まってしまって忙しい感じです。 景気が悪いのは承知の上で、何とかいろいろディスカウントチケットとマイレージの特典を大幅に活用して、何とか安く上げることが出来ました。 それにしても行き帰りの飛行機が何と満席。 ほとんどガラガラを予想していたのでビックリしました。 サスガにアメリカ国内はガラガラで3分の1も乗っていないのでは、と思われるくらいです。 従って混むであろうと予想した搭乗のときのセキュリティチェックは時間はかかるものの、混雑はしていないようです。 相変わらずちょっと大き目の靴を履いていったら、完全に脱がされてチェックをシッカリされてしまいました。 またゲートになっている検知器も感度がものすごく上がっていて、これを無事で抜けるのは至難の技ではなかろうか、と思われるくらいです。 ベルトのバックルも反応して、今までは、ああバックルか、で終わったのですが、今回はそれを外させてされにチェックすると言うやり方で、本来から言うとこれくらいやらないといけないようになったのでしょう。 本当に凶器を持って入ろうとする人は、見せ掛けに反応するものを持って入って警報はそのセイにしてしまうことが良く有ったようです。 その他は空港自体が空いているのか遅れも無く旅行できました。

行ってる間にも北朝鮮の話とか、デフレ対策の話が日本では起こっていた方ですが、アメリカではほとんどの人が特に北朝鮮の問題は知らないようです。 やはり日本の対応が、アメリカとしては少々やりにくいと言うことでしょう。 北朝鮮も最初の時期の日本国内の反応にビックリしていろいろ譲歩してきたようですが、最近はそうでもないような印象です。 やはり最初の交渉の時にもっと毅然として席を立つぐらいで丁度良かったのではないでしょうか。 下手に正式の交渉が始まってしまうので、例の核兵器保有問題もややこしくなって、持っていないと言っているイラクに対しても対応が難しくなってきているのではないでしょうか。 まあ、いずれにしても年明けにはイラク攻撃のアクションが出てくるでしょう。

片や、日本の不良債権処理は泥沼になって来ました。 竹中大臣の強行突破方式が良いのかどうかはさておいても、結局デフレ対策と不良債権問題のどちらにもこれと言う方向性が見出せなくなってきました。 アメリカの経済状況も基本的にはデフレですから、日本の10年前と同じ状況が展開されます。 すこし異なるのはアメリカのアクションが速い事、また戦争と言う手を使える事が、日本のように財政出動しか出来ないところとは、違いが出てくるでしょう。

今回の訪米で仕事以外の最大の収穫は、MP3プレーヤーでした。 最初は某シンガポールメーカーの物が小さくて良いと思って探したのですが、64Mバイトの物はあっても128Mバイトのものが見当たらず、それを探している最中に見つけました。 会社はアメリカのシリコンバレーにあるそうですが、産地はメモリの安い韓国。 恐らく韓国人がシリコンバレーで開発したのでしょう。 128Mバイトあると、CDが大体2枚入ります。 音質もヘッドフォンで聞く限り問題なく、いままでCDの束と大きなCDプレーヤーを機内に持ち込んでいたのが嘘のようです。 これで税金込みの180ドルはいくら円が安くなったと言っても、お買い得でしょう。 おまけに録音機能が付いていて、試しに飛行機の中で持っていったCDから録音するとこれが一発でOKなんですね。 もちろんPCからもUSBでコントロール出来るのですが、マイクや小型ながらスピーカーも付いていて、会話の録音も出来てしまいます。

もう少しお金を出すと、半導体メモリではなくてディスクドライブを使った300曲ぐらい入るものがありますが、当然に少々大きさが大きくなり重くなります。 それでも一昔前のMDプレーヤー並でしょうか。 映像をいれてビデオも見ることが出来るようです。 そこまでで無くてもと言う方には、CDに入れたMP3音楽を再生できるものがあります。 これですと通常のCDも再生OKで、MP3にすると10時間ぐらいの音楽を再生できます。

飛行機の前の席に座っていた、韓国人か中国人。 やおらでっかいIBMのThinkPadを取り出すと、DVDをいれて大きな画面(13インチはあろうか)で綺麗なビデオを見出したのでビックリ。 さてはシリコンバレーのベンチャーで新しく開発したに違いないと、わざわざ聞いてみたが、最近はこう言うのはあたりまえで、そう言われてみれば、最近ではCDはもちろんDVDも再生できるドライブを装備したPCが出てきているので何の不思議も無いのです。 こちらが少々世の中に遅れを取っているだけでした。 それにしても恐るべし、半導体とミクロ加工技術。 たった10年前でもほとんど魔法の世界ですから。

ついでに日本で探したのが壊れかけているノイズキャンセラ付きのヘッドフォン。 BOSEも大きなものを出していますが、当然高いし、もって歩くにも不便と言うことでWebで検索したら出てきました。 こう言うのはやはり日本製が良いようです。 少し繊細でないとこう言うものは作れないようですね。 この現物はまだ入手しておりませんので、次回に評価を報告します。

映画もクリスマス前と言うことで不作。 何と日本の映画が20本のうち3本もあったということにビックリしました。 今まで見たことがほとんど無かったのですが、千と千尋、ポケモン、リングの3つが上映されていました。 意地を張ってどれも見ませんでしたが、リングは見ておけば良かったと後で後悔。 でも日本とアメリカでは怖さに対する感受性が異なるので、何のこっちゃとなってしまったのかも知れません。 だけと日本で見たリングは怖かったですね。 夜寝れないと言うのも分かります。 リングがらせんでDNAで何とかウイスルが増殖するとか言う話になるとアメリカ受けするのかもしれません。

と言いながら、今月の読み物はまたまた経済物です。 そろそろ国債は銀行も買えなくなって、最終的は日本銀行が買っている(お札を刷っている)のですので、個人の金融資産160兆円を狙って個人向けの国債が来年から発売されるようですので、そのお勉強です。 良く良く考えてみたら利率はわずかとは言え元本が保持できているのは国債だけですからね。 株はボロボロ、債権も水面下です。 国債暴落、中公新書ラクレ、高田 創、 住友 謙一 (著) ¥680なり。 現状では暴落はそう簡単には起こらない。 むしろ景気が上向いた時に起こる、と言うことを、かなり専門的に解説しています。 従って読み物としては読みにくい。 何度も同じ所を読み返さないと分からない。 また専門用語がボンボン出てくる。 170ページぐらいなので、ちょっと腰を落ち着けて経済問題を勉強しようと言う人にはお勧めです。

本書では、市場関係者という著者の立場から、国債暴落とは何か、暴落が起きると何が悪いのか、暴落するとしたらどのようなメカニズムのなかで生じるのか、どのタイミングで生じ得るのかが具体的に解説され、さらに日本経済再生のシナリオが提示されている。
著者によれば、最近何かと話題になる「国債暴落」は、国債売却および入札の面で見れば、当面は懸念材料にすぎないという。それは、日本は国内のみでファイナンスが完結しており、またマクロ的に国債に資金が流入しやすい状況にあり、さらに、国債入札ではシンジケート団引き受け制度があるからである。ただし、国債暴落が懸念事項であることには変わりはなく、真の国債暴落はむしろ、企業、金融、公的セクターのリストラが終わり、景気に回復の兆しが見られる時期に深刻な問題になり得るという。

興味深いのは、国債問題を切り口に、資産価格の暴落により大不況にある日本を、世界における経済大国、貿易黒字国、バブル崩壊の後債務負担を抱えた1930年から50年のアメリカと対比して解説している部分である。それによると、1990年のバブル崩壊を1929年の世界大恐慌に照らし合わせると、金融システム対策が取られたものの、構造改革議論に対する世論の軸足が振れている今の日本は、1937年のアメリカと同じ状況であるという。この延長で考えると、日本の場合は立ち直りまでにさらに12年の年月が必要である。(Amazon.comの書評より引用)





10月6日
株価がドンドン下がったりして経済が停滞している間に、インターネットの世界は意外に健闘しています。 今年の6月に総務省が調査したところによると、5月末現在での国内DSL加入者数が302万8,556に達したとの事で、この3カ月連続で、毎月30万以上増加しています。 加入者数推移をみると、2000年末には、1万にも満たなかったが、2001年6月にヤフーが格安のADSL接続サービス参入を発表したことが起爆剤となって、利用料の価格破壊が起こり、秋頃から急増、2001年11月には100万、今年2月には200万に達したとの事です。 この調子で行くと年末には500万に達すると言われています。

ちなみに、世界のADSL大国である韓国の状況は、2001年内には400万に届きそうな勢いで、CATVインターネットユーザーなどを合わせた,いわゆる「ブロードバンドユーザー」は,2001年中に750万〜800万世帯に達する見込み。ダイヤルアップを含む「インターネットユーザー」という区切りなら,2001年中に2200万人を超えるという事です。この数字は,何と韓国全人口の半数にあたります。 ADSLやブロードバンドと言う点ではIT大国のアメリカを遥かに凌いでいます。 料金的にも韓国が最も安くて、アメリカは最も高いと言う結果が出ています。 東京は4850円、ニューヨークは7176円、ロンドン4477円、ソウル3081円だそうです。 YahooBBを入れると日本も韓国と同じ程度になるのではないでしょうか。

日本ではファイバーを家庭に引き込むFTTHがメイン将来のインフラとされ、その敷設に何兆円かかるとかの議論が主流で、ADSLはあくまで亜流であって、もし導入されてもFTTHまでの繋ぎに過ぎないと言うことがまじめに議論されていました。 しかし現実はADSLがドンドン導入されて瞬く間に主流になってしまいました。 更にはこの波及効果でファイバーも6000円とか言うレベルで利用できるようになりました。

特に関西地区では電力会社や電鉄会社の後押しで安いADSLやファイバーが利用できるようです。 ちなみに最近ADSLを切り替えたのですが、モデムは別ながら2200円で8Mbpsが使えるようになりました。 実際はモデムのトラブルとかいろいろあったのですが、ftpやメールアクセスの制限などはほとんど無く問題なく使えます。 この料金はYahooBBより安くてアクセスの制限が無いのがうれしいです。

とか何とか言っているうちに12Mbpsのサービスが始まったので、この8Mbpsのサービスも見劣りがするようになりましたが、実効速度は1Mbpsもあればほとんど問題ないので、ファイバー化をいろいろ検討しましたが、それに見合うコンテンツが見当たらないので先送りになっています。

コンテンツと言えば、最近インターネットラジオが発売になりました。 インターネットラジオのサービスは以前よりあったのですが、PCで聞くしか手がありませんでした。 今回発表になったのは本当にラジオの形をしていて、電源を入れるとすぐに使えるものです。 こう言うのは以前よりあったのでは無いかと思いましたが、なかなか無かったようです。 PCを使いながらラジオを聞いても良いのですが、PCが遅くなるのと、下手するとPCがハングすることも多かったので、なかなか面白いと思いました。

今回のは定価で34800円。 表示とコントロールつまみとステレオスピーカーが付いています。 LANに繋いで電源を入れて、選局するだけで、通常のラジオと何ら変わりはありません。 作り付けのプログラムから選んでも良いですし、特別のサイトに設定した自分で探したラジオ局を選局することも出来ます。 96kのMP3ですと大きなスピーカーに繋いでも音色に問題はありません。 流石に24kとかでは音質がかなり落ちます。 それにしてもインターネットラジオの初期の頃は、伝送速度も遅くて短波の放送を聞いているようなもので、無線通信の初期の頃を思い出させるものでした。 これはいつかFM放送のようなものになるに違いない、と確信したのですが本当にそのようになってしまいました。

問題は事業としてのインターネットラジオです。 現時点では無料でしかもコマーシャルは入っていませんので、事業としてみた場合は成立しません。 おまけに著作権に対して対価を支払わないといけないので、ボランティアとしての放送も容易ではありません。 音楽著作権に関してはNapstar騒動の時に解決の明かりが見えたのですが、それも現在では消えてしまっています。

いずれにしても音に関するインターネット上の技術問題はIP電話を含めて完全に解消されたと見てよいでしょう。 後は映像です。 ファイバーがイマイチ普及しないのは映像コンテンツ問題が著作権を含めて解決していないからでしょう。 それでも近い将来にはLANに直結するインターネットテレビが現れて、安い料金で番組を見ることが出来るようになるでしょう。 NHKの受信料よりはるかに安ければ、現在の地上波TVのかなりの部分がインターネットTVに取って代わることは現実的になってきました。 地上波デジタルと言うようなアメリカでも大失敗したものにお金をかけるのではなくて、インターネットTVにリソースを投入するようにすれば、問題の経済も立ち上がっていくのではないでしょうか。 この時に現在のADSLから、究極の情報インフラであるファイバーによるインターネットへの大規模な変動が起きるのでしょう。

今月の書籍は 「戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 バトル・シミュレーション」 松村 劭 (著) 価格:¥1,500。 宣伝文句曰く、日本初、元自衛隊作戦参謀が明かす、戦い、組織での集団の指揮と動かし方。ゲーム形式を用いて、ビジネスマンが職場にも応用できる内容。 ビジネスですぐに役に立つ「目標・統一・主導・集中・奇襲・機動・経済・簡明・警戒」の9原則とは何か。プロが作った、パソコン・ゲームをこえる本格戦術シミュレーション60題。敵と味方を考える21の質問、集団における命令の下し方、現場と指導者のギャップの埋め方など、戦術についてわかりやすく解説。プロが作った、本格戦術シミュレーション60題。日常生活に活かせる。

積極策を進言する部下の気持ちを思いやるとか、本国の官僚とのやり取り、など単なる戦闘シミュレーションだけではないリアリティがあります。 また戦後の偏った平和主義のおかげでこう言う議論はほとんどなされてこなかったのではないでしょうか。 内容はそんなに先鋭的でもないのですが、平和ボケした我々には新鮮に写ります。 武力を賞賛するわけではなくて、少なくともこう言うことを背景に持ちながらアメリカのイラク攻撃に注文をつけるとかしないと、良い悪いはともかく人類の過去は戦争(戦闘)の歴史でもあった訳で、こう言う土俵で話さないと通じるものも通じなくなるのでは無いかと思います






9月1日
住基ネットの11桁の番号がやっと送られてきました。 使う使わないは関係なく、法律によってこの番号を拒否できないそうです。 従って住基ネットでは名前とか生年月日とかだけが記録されているようですが、各場面でこの番号を使うことで最終的には全ての情報が一元管理される可能性があるということです。 このシステムへの不参加を最初に表明した町は一躍有名になりました。

ちなみにこの番号は申請で変更出来るようです。 4や9は縁起が悪いとかで変更を申請している人が多いとか。 もしこれが無制限に出来るのなら、定期的に変更するのも手かもしれません。 少なくとも建前のとおり、基本データのアクセスだけに実質限定出来るでしょう。

住基ネットが始まる前に、TVでどこかの知事さんが2つのファイアーウオールで守られているので安全です、とたどたどしく説明をしていましたが、問題は技術的な事ではなくて使う方の人間の問題でしょう。 破れないコンピュータセキュリティは存在しない、とよく言われますが、破るのに100年かかったらそれは意味が無いと思います。

暗号を例えに取りますと、どんな暗号でも時間をかけたら解けます。 暗号解読コンテストが1997年より延々と行われていますが、5-6年かかると言われていますので、そろそろ 来年か再来年には解けるのではないでしょうか。 私も参加していましたが最近は参加していないので5000位ぐらいから35000位ぐらいまで落ちてしまいました。 トータルで10万人程度の参加ではないでしょうか。 これをヒントに大手のコンピュータ会社ではグリッドコンピューティングと言う次世代のコンピュータコンセプトが開発されています。

ところでコンピュータセキュリティとは如何にそれを破るのに時間をかけさせるかの勝負であるとも言えます。 明日の株価の予測が明日になったら意味がなくなるのと同じように、時間が経てば秘密も秘密ではなくなってきます。 またDNAコンピュータみたいなものが出てくると解読に1000年は必要だったと思われるものが数日で解読できるようになって来るでしょう。 しかし現時点での技術で容易に破れるセキュリティはそんなに多くはないでしょう。

住基ネットに話を戻すと、問題はシステムの難しいセキュリティの話ではなくて、先日来紙面を賑わせている某F社の防衛庁のシステム設計データの流出とかのように人間が介在する場合が最も脆弱です。 11桁の番号で関連付けされた個々のデータが個人によって持ち出されて悪用されるような場合は大問題です。 更には組織によって目的外に使用されたらこれも問題です。 法律を作って防止すると言う事も基本的には行わないといけませんが、それで完全には防止できません。 F社の場合でもこれは犯罪もしくは社内規定違反に当たるのですがそれを防止できませんでした。 最近では日本ハムや東京電力の例でも分かるように、明確なるルール違反でも実行されるときは実行されます。 更にはホワイトカラー犯罪に対する罰則が低いと言うこともあるでしょう。 起訴されるだけで社会的な制裁を受けると言うことでしょうが、その影響の大きさからもう少し強くして抑止力をつけるべきでしょう。

こう言うようなトータルでは不完全なシステムがアメリカであまり大きな問題も無く使われているのは、やはり中央政府は信用出来ないとするアメリカ建国以来の伝統があるからでしょう。 アメリカは各州がいわば政府のような役割を果たしています。 警察を始め軍隊まで持っています。 JFケネディが黒人を大学に入学させようとして、時の州知事が軍隊を出してこれを阻止しようとした事などは典型的な例です。 映画でよく出てくるFBIと州警察のいがみ合いもこれを表しています。 最近では中央政府の権力が大きくなったようですが、建国時代はほとんど力が無かったというより持たされていなかったようです。ホワイトハウスが如何に小さいか。 この伝統のためか未だにトータルなシステムは無いようです。 10桁のSS番号(ソーシャルセキュリティ番号)と言う番号で一応は番号付けされてはいますが、その使い方は(意図的に)結構不便になっているようです。

経済状況もドンドン悪化の様相で、日本の株価はとうとう1万円割れ、ダウは9000ドル割れがあたりまえになって来たのですが誰も大変とは言わなくなりました。 こんな状況の中で道路はまだまだ作るんだとか、本当に日本の政治家は何を考えているのかと情けなくなくなります。 ペイオフ解禁も中途半端で、なんで今ごろ決済性預金保護の話が出てくるのか理解に苦しみます。 決済システムの保護であればいわゆる金月処理(金曜日に破綻させて月曜日から営業)すれば良い事で、決済性預金を保護しても決済保護にはなりません。 銀行が破綻すれば預金が保護されていようがいまいが、一度は口座取り引きがストップするのですから同じ事ではないでしょうか。 要するにこれを必要としてる銀行はペイオフ解禁延期を求めているのです。 小泉内閣は一度ペイオフ解禁を言ったので、これを取り消すわけには行かず、同じ事ながら別の言い方をしているに過ぎません。 どっちに転ぶにしろ正直に言えば支持率も格段に上がると思うのですが。

そうこう言っている間に北朝鮮訪問が突然浮上してきて、何となくイチかバチかのやけくそに見たいになって来ました。 短い言葉でポンポンと言えば日本ではそれなりに煙に巻くことが出来たのでしょうが、あの交渉上手な北朝鮮相手ではそれがどこまで通用するのか見ものになってきました。 ストレートなところはプラスに働くでしょうが、もう少し説明をしないと伝わらないでしょう。 結果が見ものです。 その後に上半期の中間決算期を迎え、その後はアメリカの中間選挙、恐らくその前のイラク攻撃などなどと山場がドンドンやってくる感じです。

そう言うことで、今月の読み物は「デフレの経済学」です。岩田規久男著 \1,900。 近年の先進国ではインフレーションが常態であるので,デフレーションについて解説した本はほとんどありません。 本書は,デフレの原因やその(悪い)効果や,日本(高橋財政など)および外国における過去のデフレ対策法を,わかり易く説明しています。 さらに通貨供給を増加させることによって緩やかなインフレが実現すれば、期待実質金利の低下や実質賃金の調整や需要増を通じて、経済が成長路線に戻る、という処方箋です。 日本銀行の当座預金を増やせばどのようなメカニズムで貨幣供給が増えるか、というような点についても親切に説明していますので、分厚いですが簡単に読む事が出来ます。 インフレの本はたくさん有りますが、デフレの本はほとんど無いので良い教科書になります。

従来はデフレでは無いと言い続けてきた政府とその構造改革が頓挫しそうな状況の中で、次の一手を考えるのに大変参考になります。







8月3日
段々と世界経済の情勢が危うくなって来ました。 先々月からアメリカの株価が落ちだして、上がったり下がったりですが、結局8000ドル台に落ち着いてしまいました。 冷静によく考えると10数年前は2000ドルで、グリーンスパンがバブルだと警告したのは6000ドル台の時で、それからあっという間に1万ドルに上がって、誰も不思議には思いませんでした。 株価と収益の関連を示すPERも異常な高さのままですから、このまま6000ドル台まで落ちても何の不思議も無いわけです。 アメリカの株価に引きずられる形で日本の株価も9700円まで落ちてしまいました。 ヨーロッパも同じでドンドン落ちています。 ひどいところではアメリカより大きな下落率を示しています。

本来アメリカの株が下がると、基本的にはお買い得の日本の株式に買いが集まるので、チョット前までは上がりましたが、最近では同じように下がってきました。 これは外国人の買いが少なくなったと言うことで、アメリカへの投資とのバランスが問題になってきたのでしょう。 結果的に株式投資全体のサイズが縮小してきているのです。 このため資金は債券市場に向かっていて、債権の金利が下落傾向にあります。

しかしアメリカの経済が、なぜ一応の水準でとどまっているのは誰にも分かりません。 実体経済は意外に強いと言う見方もありますが、現に設備投資は落ちています。 反面失業率は5.9%で急増している訳では無いようです。 また、株価の下落とそれにつられたストックオプションのほとんど無価値化で大きな含み損を抱えた個人消費は一向に落ちる気配がありません。 またぞろアメリカ経済特殊論(以前はニューエコノミー論)が出て来て、いい加減にしてくれと言いたくなります。

多少は不安があろうがお金さえあれば使ってしまうと言うような国民性、前述した債権金利の下落による住宅ローン金利の下落、アメリカ独特の住宅ローンの借り換え制度などで、個人のキャッシュは何とか回っているのでしょう。 今年のクリスマス商戦が一つの分かれ目になるでしょう。

まあ何のかんの言っても、景気は年末までは持つでしょう。 アメリカは中間選挙でブッシュ政権の最大のテーマは経済ですから、イラク攻撃を含めて何でもありの政策を取るではないでしょうか。 この辺は日本のバブル崩壊後を良く見ていると思います。 日本は秋の政局、9月決算で何とか持たせるでしょう。 円安の効果も何とか年末までは持つでしょうが円高が続くと大体半年遅れで効果が出てきますから、年末から年明けにかけてを考えると背筋が寒くなりますね。 今年の年初みたいにガクッと来るのではないでしょうか。 今年はアメリカが未だ元気だったのですが、来年は分かりません。

最近の論調では、とうとうアメリカ資本主義も行き詰まったか、ざまあ見ろ、と言うようなのが増えてきました。 80年代はJapan As No.1 で土地の含み資産を活用する日本型経営がもてはやされました。 その中に年功序列や終身雇用制、企業別組合などがあり、日本の成長の秘密みたいに言われましたが、90年代を終わってみると今度はアメリカの株式を中心とした経営が破綻しました。 これの具体的な問題がエンロンであり、ワールドコムであったわけです。 特にワールドコムの問題は、確かに冷静に考えると回線費用を資産計上する事はおかしいのですが、基本的に粉飾決算気味のアメリカではそうおかしくなかったのかも知れません。 決算書にちゃんと注釈がついていたりして、分かるようになっていたというのが旧経営者の言い分です。 元々過剰な投資が問題だったのですから、リース料も将来に対する一種の投資であると言うのがCEOの言いたいことでしょう。 もちろんこれは会計基準では認められないことです。 いずれにしても会計方法の操作で何千億円もの利益が生み出せると言うことを実証したのですから不信も極まっています。

21世紀は既に始まったと思っていたのですが、やっと本当の姿が見えてきたのではないでしょうか? 日本型のやり方も駄目、グローバルスタンダードを旗印に主導権を取ろうとしたアメリカ型の株式本位主義も駄目、ヨーロッパの債権を主にした経営も駄目となって、良いも悪いも目指すべき方向がなくなってきました。 後残るのは激烈な競争社会である中国でしょうが中国式のやり方には何となくしんどいものを感じるのは私が歳を取ったせいでしょうか。

今月の話題でどうしても取り上げておかないといけないのは、住基ネットでしょう。 個人情報保護法案が成立しない中、システムだけが見切り発車しました。 もうすぐ11桁の番号が役所から送られてくるでしょう。 100種近くの申請に住民票が要らなくなると言うことですが、ほとんど一般の人には関係の無い申請が多いようです。 元来戸籍簿、住民票でガチガチに管理されている日本で本当にこう言うものが必要なのかどうかは意見の分かれるところでしょう。 また、将来この11桁の数字が一人歩きする可能性は大いにあります。 住民票だけならインターネットやファックスで自由に取れるようにすれば済む事で、このような住基ネットのような大掛かりなものは不要です。 土木を中心とした従来型の公共投資の変形にしか見えないのは私だけでしょうか? システムも決まった大手にしか発注されないようですし、将来の電子政府の構築にも結局は地元のシステムハウスは直接参加できず、下請けに甘んじるのであれば、現状の公共投資の問題点をそっくりそのまま引き継ぐことにしかならないのでは無いでしょうか。

11桁の個人番号を使わない運動もあるようですが、少々けち臭い。 今現時点でのデータは住所と名前と生年月日ですから、それは良いとして、これに後何が追加されるかです。 日本の怖いのはこれがなし崩し的に行われてしまうことです。 アメリカではこの辺はバランスが働いていて、そのそも政府を信用していません。 州政府が連邦政府を信用していないのと同じです。 国民総番号に相当するソーシャルセキュリティ番号(日本でいうと国民年金番号)が少なくとも日常生活では必須ですが、これが他のシステム例えば入国管理とつながっているかと言うとこれがつながっていない。 戸籍も住民票も無いアメリカですから唯一の個人IDですが、これがこのような状態です。 日本は少々ガチガチしすぎで、政府にまかせっきりの傾向が強いと思います。

今月の本は中島みち著 「患者革命 納得の医療 納得の死」 (岩波アクティブ新書、本体700円)です。  「医療は患者が主役」と言われて久しい。医者まかせではいけないが、では、患者はどうすればよいか。長く医療現場を取材してきた著者が答える。  「誤診からいのちを守るために」の項では、自らの乳がん体験から、がん治療の手遅れを防ぐ病理医制度の確立を訴える。  最愛の夫は「肺がんの気管支鏡検査を」という訴えが医師に聞き入れられず、発見が遅れて亡くなった。患者はカンを大切に、医師は患者や家族の小さな情報を的確に受け取る度量を持つべきだと説く。

私自身が、1年近くの入院の末母親を亡くしましたので、この主張は良く分かります。 いかに病院と言うのはいい加減か、こちらの気持ちを分かろうとしないかを痛感しました。 最近でもTVで報道されましたが、両親が病院を経している人で、その子供が医療ミスで亡くなったと言うことがあり、10年越しの裁判になっているとの事です。 この両親やこの本の著者のように、医療現場を知り尽くしている人達ですら理解できないことが横行しているのです。 最近ではインターネットを通じた情報交換が盛んになったようです。 私の場合ももう少し後であったならインターネットを通じた情報でもう少し何とかできたのでは、と思っています。 本書は、身近な人々を誤診等で亡くされた著者が、自らの反省も含めて、すべてのひとにアドバイスする、後悔しない「送り方」「送られ方」の本です。







7月1日
先月にアメリカがおかしい、と本欄で書いたとたんにダウが下がり、日経平均も1万円を切るかどうかと言うようなところまで来ました。 幸いと言うか月末兼週末には少々持ち直したようですが、これからどうなるか全く予断を許しません。 景気底打ち宣言も束の間、また不透明になってきました。 アメリカの今回の切っ掛けは例のワールドコムの粉飾決算ですが、エンロンと違って修理費を資産計上すると言う最もありふれた、良くある方法であるので、その監査をしたアーサー・アンダーセンがエンロンに続いての不祥事で元々消滅するとか言われていましたが、これで決定的になるでしょう。 ブッシュ大統領も特別にコメントするくらいですから、かなり異例です。 今日現在で小康状態ですが、ワールドコムの事業そのものも悪化の一途ですから、チャプターイレブン(会社更生法に当る)の申請は時間の問題で、そうなるとエンロン以上の問題となり、ワールドコムに融資していたアメリカの銀行への打撃が大きくなります。 幸いなことに日本の銀行や証券会社はエンロンほどにはお金を突っ込んでいないようなので、影響は少ないのですが、経済そのものがおかしくなるとそうも言っておれないでしょう。 もう一段の下げはあるでしょうが、日本では上期の決算が9月に控えており、その時点ではしっかりするのではないかト思います。

ほとんどアメリカペースのサミットでしたが、アメリカの調子がおかしいので日本の構造改革も不問で、これ幸いと小泉首相も何にも言わなかったみたいですね。 しかしこの調子ではG8からも外されて中国に取って代わられると言う話ももっぱらです。 世界トップクラスの経済的潜在力と軍事的潜在力を持っていながら、ほとんど発揮できないのは情けない感じがします。 サッカーのワールドカップも日韓それぞれのの試合は終わりましたが、その違いに愕然とされた方も多かったのは無いかと思います。 韓国の気迫に比べての日本のアッサリした負け方はまさに国の現状をそのまま表していると言っても良いでしょう。 韓国のサポーターはどこの試合でも赤のユニフォームを着ていくが、日本のサポーターはそれぞれの試合の国のユニフォームを着ていくとか、負けたチームへ「夢を有難う」とか言って非難はないとか、他の国のチームにも同じように声援を送るとか、海外の報道も奇異な感じで伝えています。 流石に変だとは言えずに日本のサポーターのすばらしさと言う風な伝え方ですが、勝つと言う気迫の点ではほとんど感じられないのが本当でしょう。

かつてはオイルショックやドルショック、円高不況ではコストダウンの掛け声で気迫を持って難局に取り組もうと言う気概があったような気がしますが、最近では完全に諦めたと言うか試合放棄的な、何にもしない出来ない症候群が目立ちます。 確かに失われた10年とよく言いますが、ほとんど何もしてこなかったのではないでしょうか。 このままズルズルと衰退していくのはやり切れません。 もっと元気を出しましょう。

通信の世界で最近注目を浴びているのは MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)です。 NTTドコモの立川社長は否定的らしいですが、いわゆるキャリアからモーバイル回線を借りてその上で新たな付加価値を提供すると言うものです。 従来、モバイル環境はキャリアと呼ばれる公にワイヤレス帯域の使用を認められた「ワイヤレス通信網」を所有する事業者によって提供されていました。ワイヤレス通信網、通信端末、サービスなどがすべて1つの事業者の管理下にあり、それを利用するために事業者に使用料金を支払っていますが、MVNOではこの通信網とサービスを分離しようと言う事です。 ワイヤレス通信網そのものはキャリアから「卸売り」を受けることで、自社ではワイヤレス通信網インフラを持たないところが大きな特長で、利用者が求めるワイヤレス帯域、料金体系、端末、サービスなどのモバイルアクセスに必要なすべての要素を一括して、利用者に提供できる点が新しい。 著名なMVNOには、英国のVirgin Mobileがあるます。これはリチャード・ブランソン氏率いるVirgin Groupが自らのモバイル事業として、主に一般消費者市場を狙って、利用料金と端末をセットにして展開したもので、低料金とサービス内容、そしてブランド力で成功を収めています。 総務省もガイドラインを発表し、新しいモーバイルサービスとして注目されています。 変わったところでは、車の位置確認のシステムとか、遠隔地のセンサーからのデータを収集すると言うようなサービスもあります。

もう一つの新しい動きとしては、以前に本欄でご紹介したようなホットスポットが急速に広まっていますが、このホットスポット同士をつなぐと一種の通信インフラになるわけで、インターネットの創生期を髣髴とさせるシステムです。 但しセキュリティの確保がなかなか出来ませんので、一般的に使えるようになるまでにはまだまだ技術開発の要素が多くあります。 町を車で走りながら、ホットスポットみたいなネットワークを探すと驚くほど沢山あると言うことですので、自宅で無線LANを構築しておられる方は、家の外からでも容易にアクセス出来る可能性がありますので、注意が必要です。 下手するとPCのファイルが丸見えと言うような事が良くあります。 自分のPCで自分のセキュリティの状況を直接確認できないのが問題です。 いずれにしても21世紀のITの最大の課題はセキュリティ問題でしょう。 これが片付けばグリッドコンピューティングであろうが、なんであろうが世界中の10年前なら大型コンピュータに相当する何億ものPCを直接繋いで、また新しいIT時代が出現するでしょう。

今月の書籍は、かなり古いもので昭和55年に出た、学生時代におなじみ一松先生の「暗号の数理」Blue Backs \860 です。 今読んでも古さを感じさせない内容で、下手に現状を知って書いたものではありませんから淡々と話は進みます。 最初はそんなに古い本だとは知らずに読みましたが、途中から様子がおかしいので確認したら、インターネットが生まれたかどうかという時代の著作でした。 現実世界への貢献は直接はない数学者にとって唯一の貢献と言われているのがこの暗号技術。 先ほど紹介した総務省のホームページでも、電子政府を睨んだ電子申請・届出システムでも、ここで紹介されている公開鍵方式の暗号技術を使ったものです。

本書のむすびには、「しかし現在のところ、大型計算機でないと処理が間にあわないとすると、主目的として考えられた日常の電子郵便や個人情報ファイルのプライバシー保護といった業務には高嶺の花であり、結局、軍事用やスパイ用にしか使われないことになるかもしれない。」 とありますが、PCの処理能力はここで言う大型計算機の能力を大きく何百倍にも上回ってきており、インターネットが普及し個人のプライバシーを守る必要が出た今、暗号のためのインフラが整っていたことを我々は感謝すべきでしょう。