5.リ・エンジニアリングとイントラネット
先にイントラネットの定義で述べたように、イントラネットの'本質は組織運営の変革にあります。 イントラネットが話題になる前に「リ・エンジニアリング」と言う言葉が流行しました。 この手法のポイントはビジネスプロセスをITインフラを活用して変革すると言う点にあったのですが、なぜか日本ではITインフラの部分が無視され、変革のみが強調されて、結局リストラと言う観点でしかとらえられませんでした。アメリカでは状況は少し異なったのですが、決定的なITインフラを構築できずに、これまた日本的な小集団活動的な側面だけが紹介、適用されたに過ぎません。
何度も触れているようにイントラネットの本質は,「企業戦略によるインターネットの利用」ではなく「インターネットによる企業文化の変革」にあります。 確かにイントラネットには経済性や簡便性などのさまざまな実務的メリットがありますが、イントラネットを導入するということは,好むと好まざるとにかかわらず、インターネットの文化を企業内に導入することを意味しています。 インターネットの文化とは,「オープン(疎放性)」、「ボトムアップ(平等性)」、「ボランティア(自律性)」といった、いわば「グラスルーツ(草の根)」の文化であり、この文化は、これまでの企業文化の特徴であった、「クローズ(閉鎖性)」、「トップダウン(階層性)」、「オーダ(他律性)」といった文化とは本来、相反するものでしょう。 従って、イントラネットを導入する時には我々が経験したようなインターネット文化との摩擦が必ず起ります。 こうした文化摩擦を超え、新しい企業文化を創造した企業こそが、分水嶺を越えた時代に活躍する企業となることでしょう。
次に、中間管理職の役割が変化するでしょう。 イントラネッドの導入によって最も良く使われるのは電子メールであることは先ほど述べましたが、電子メールが社内に普及することによって「フラット組織」が実現し,中間管理職が不要になるのでしょうか? 電子メールで本当に意思決定が速くなるのでしょうか? 。日本の企業において意思決定が遅いのは,単に情報伝達に時間がかかるという様な事が主な原因では無いと思います。 稟議書を手渡すのと電子メールで送るのにどれだけ時間的な差があるのでしょう。
問題は意思決定のプロセスにあります。 我々は一つの試みとして、この意思決定を公開の場で行うことによって、問題を浮彫りにする事と新しい意思決定スタイルを模索するための試行を行っています。 通常の場合、正しい状況判断と正確な情報があれば誰れでも正しい意思決定が出来るはずです。従来は情報システムがピラミッド型にせざるを得なかったので、中間管理職が必要で、そこに意思決定が集中することになるのです。 イントラネットの出現で、情報は一瞬にして伝わるので、情報のピラミッド構造は不要になり、中間管理職は日常的な判断業務から解放されて、冒頭に述べたようにもっと長期的な戦略的な判断が要求されるようになるでしょう。
次ページへ
目次へ戻る