スピードを早め、人に会うこと。人が情報を持っている。
WlNEが社内に普及し、スピードアップや情報の共有化が図られていますが、あなたはうまく使いこなしていますか? メールを使えばだれにも会わずに仕事を進めることや、世界中の情報を端末から晩時に得ることができるようになりました。しかし、これで本当に仕事のスピードは早められるのでしようか? また情報は十分に得られるのでしようか? 技術本部・IT研究所長の増田清さんにお間きしました。
増田さんのスピードについての話はITの先進国であるアメリカ企業の対応の早さから始まった。 「つい先日あった出来事です。米囲の大企業の経営トッブが立石社長と会談したおり、共同間発的なことをやろうと言う話が持ち上がったことを聞き付けました。それをもとに研究開発の経営トップに「会いたい」という主旨のメールを打ったら、「時問が取れない」とうメールがあっという間に返ってきました。もともと彼はものすごく多忙でもあるしう少し現場に近い人を紹介してほしかったのですが、彼は既にCCで関係者にメールをり、その中のサイエンス・センタ長から「時間が取れる」という返事が返ってきました。こういうことを繰り返して、双方の予定を合わせながら、2、3日で最終の予定が決まってしまいました。 これらをみると、やはり欧米の会社は少々違う文化があり、トップ自らメールのCCの機能を活用してミーティングのアレンジをしてしまうようです」
もちろんアメリカの会社でも遅いところはある。3ヶ所に同じような手紙をだして、1週問以上かかったところもあるという。「びっくりしたのは先ほどのような大会社の幹部でも、人に書かせるのではなく、自分で書いて送つてくること。こういうスピードは見習わなくてはいけないと思いました」
メール文化が進むぽど、面談が重要になっでくる
増田さんには部下が100人近くいるが、コミュニケーションをとるのにそればど苦労していないという。「メールのCC機能を使うことにより、複数人間との意思決定のスピードが上がっています。これは電話ではできません。電話はオンラインで基本的に相手は一人のみで言いっぱなし、間きっぱなし。FAXは少々違いますが基本的には1対1であることは同じです。またメールが使えない場面や、使えない人もいる。私はFAXとメールをそれぞれの状況に応じて便い分げています。要は使いこなしでしよう。」
わたしたちはすでにメールで連絡したり意見交換するのが普通になっているが、うまく便いこなしているのだろうか。増田さんの目は少し厳しい。「現時点では単なる文書配信システムになってしまっています。いちばん良いのは、メールを便ってちょっとした議論をすること。CC機能を便って、来たCCの全部に向かって再度返事を出します。わたしの経験では2、3回やりとりすれぱ、かなり議論できるため、わざわざ会議まで開く必要がありません。 電話では複数人間での議論はできませんが、メールならこれが可能で、会議したのと実質的に変わりません。だから会議の回数が滅っています。もちろん、あまり複雑なものは無理。さらに「面談」ば重要です。電話でも細かいことは言えないので、最後には面談となります。ここの限界をキチンとわきまえることがポイントです。 メールに絵をいれたとしても、伝える情報量は限られています。 面談の情報量には絶対にかないまぜん。
したがって、スピードを上げて、仕事の処理量を増やしてできた時間は、このような面談に便うべきでしょう。 面談する、そのために交通機関を利用する。乗っている時間はメールの返事を書くなどして有効活用する。 これらをうまく回したらさらにスピードは上がっていきます。 列車や飛行機の中で、パソコンをたたいているのも、趣味でゲームをやっている人もいるけど、メールを書いている人が結構多いと思います。 わたしも飛行機に乗るなり、急いでいたのでパソコンを取り出してメールを書いていたら、隣の人がジーと見ていて、その人もやおらパソコンを取り出してメールを打ち出したのにば笑い出しそうになりました」
メールのような面談以外の方法で自分の考えを伝えるには、まず人との按触を増やさなくてはいけない。これがスピードを上げるための墓本。「わたしたちみたいな仕事の場合は、いかに多くの人と会うかが重要。 なぜ面談が大切かというと、先に会つていないと、メールなどで本心が言えないからです。アメリカで会ったベンチャーの社長も同じことを言っていました。「まず会わないといかん」と。それから後は、テレビ会議であろうと、メールでもFAXでも良いのですね。アメリカ人であろうと日本人であろうと、知らない人は知らない人だから、その壁を超えるのは面談しかないのです」
気をつけるのは「セキュリティ」
メールではコンフィデンシャルな惜報も流れている。また、いったんインターネットの世界に入ってしまうとどこにいくかわからない。 これにも増田さんは警錨を鳴らす。「われわれは一種の情報操作職人。 だから、遣具の良い所、悪い所を知り尽くしていて、その道具を使いこなさないといけないと思います。 セキュリティについても、みんなィンターネットを信じきっているけど、ものすごく危険です。 社内便をいちいち開ける人はいないけど、電子メールの場合は、勝手に見ることができるから、メールははがきといっしよと考えるべきです。 封書と考えてはだめ。 トラップを仕掛けると目的のメールを自動的に集められるという意昧では、はがきよりひどいかもしれません。 しつけと同じで教育が必要。 インターネットの世界はニューヨークの裏通りと同じでごちゃごちゃやしていて、なにが起きても不思議ではありません」
スピードを上げるためには情報に関して、多少寛容になることも必要
WEBの登場で情報を探すスピードは上がった。今ではほとんどの惜報がWEBから入手できる状況にある。 人に間くより、自分で調べた方が早い場合もある。しかし、逆に情報が多すぎて、うまくフィルタをかける方法を考える必要があるが、増田さんば次のように考えたらと提案されている。「いまは惜報の使い捨ての時代になっています。昔のように一つの情報をカードで一所懸命に整理する時代ではありません。 来たメールを全部見ようと思うと脅追観念にとらわれてしまうので、おうように構えて、時には借報を使い捨てにすることも必要でしよう」
人をどれだけ知っているかが勝負
「メールで出たり、WEBに出た情報はすでに古い情報。 最後は人。 今ではみんなが情報入手に関しては平等になりました。 それより上をいこうと思ったら、人に会うしかありまぜん。 昔はアメリカで出ている情報を日本に紹介するだけでも役に立ちましたが、いまは全世界同時に流れ、誰でも見ることができます。 新入社員もトップも情報のアクセスという点では、だれもがスタートラインに立っていると言って良いでしょう。したがって、情報のフラット化が完全に起きています。 だから人をどれだけ知っているかが勝負。 これがないと本当のスピードは出てこないのではないでしようか。
いまの時点ではシリコンバレーに足繁く通えば、スピード感も出てくるし、情報も入ってくる。私もlヶ月に一度はシリコンパレーに行くようにしていますが、 2ヶ月になると時間が空いた感じがしてしまいますね。 しかも、むこうでオムロンの人と会う機会が増えてしまっては、逆に良くないので、意識的に外部の人と会う努力をしています」 ■
オムロン株式会社社内報「Oron Echo 1998 Spring No.248」 より転載