「今月のひとこと」の目次 毎月一回はその時々のトピックスをお送りしています。 2000年 12月 1日 11月 6日 10月 1日 9月 8日 8月 1日 7月 2日
絵や写真をクリックすると、そのページに行けます


12月1日
20世紀も残すところ後1月足らずになってしまいました。 こうやって振り返ってみると、20世紀は大きな意味での産業革命であったと言う事でしょう。 特に後半はコンピュータに代表されるIT革命であったと言う事は疑う余地のないところで、人類が生み出した中で最も強力な道具であると言っても過言では無いと思います。 今はやりのバイオ技術にしてもITと言う強力な道具なしにはDNAの解析などは夢のまた夢であったはずです。 かく言う私も若い頃にコンピュータの魅力に取りつかれた一人でしたが、現在の歳になる時にはピークは終わって次の恐らくバイオ技術に取って代わられていると思っていたものでした。 現実にはそれどころかますますその馬力と言うか影響力を増しています。 そう言う意味ではITの底力を過小評価していた事になります。

10年前の1990年頃に、これからのコンピュータ技術の方向はどうでしょうか? と某大手技術雑誌の編集者から聞かれて、性能の向上は大いにあるでしょうが、機能上の進展はこれ以上ありません、と断定的に答えてしまいました。 当時はUNIX華やかなりし頃で、ソフトウエア的にはWindowsにしても、LinuxにしてもUNIXの系譜を外れるものではありません。 ハードウエア的にはインテルアーキテクチャが基本的に採用され続けてこれも変化は無いでしょう。 大きな変化は、やはりオブジェクト指向技術。この技術はハードウエアの進歩があって始めて成り立つものですが、これが実用化されたのは1990年代の最大のソフトウエア技術の成果ではないでしょうか。

もちろんインターネット技術なんて「かけら」しかなかった時代ですから、全くそうは思わなかったものです。 マイクロソフトのビルゲイツですら、Windows95の初期バージョンを見ても分かるように、全くインターネットを意識していなかったのは明白ですので、これはしょうがないか、と諦めています。 どっちにしてもインターネットが今世紀最大の発明であると言うのは異論の無いところでしょう。 インターネットの「かけら」はUNIXから来たものですから、最終的にはUNIXが最大の功労者でしょうか。

初期のUNIXは単なるシンプルなOSであった訳で、Windowsで当たり前に使われているツリー構造のディレクトリはUNIXから来たものです。 初期のMS-DOSはまずディレクトリと言う考え方がありませんでした。 またインターネットで大きなベースとなっているTCP/IPはアメリカの軍が核攻撃に耐え得る通信システムの研究から出てきた物です。 一時はISO規格で取って代わられようとしたのですが、どっこい、しぶとく、1960年代の終わりから30年以上も生き続けています。 30年以上も生き残ったコンピュータ技術は、これくらいではないでしょうか。 更にはゼロックスのPARC研究所で発明されたウインドウシステムがアップルのジョブズに見出され、そのコンセプトをUNIXに載せたのがX-Windowsであり、現在のLinuxにも採用されています。 これらのシンプルなOS機能とTCP/IPとそれをLANと共用化したイーサネット、ウインドウシステムが最後の段階のUNIXにまとめあげられたのです。

それではこれからの10年の技術の方向はどうなるのでしょうか? まずハードウエア的には10年後には10GHzのクロックには間違い無くなっているでしょう。 1995年に出たPentium Proが150MHZで、現在のPentium3が約1GHzですから、5年で約8倍になった事になります。従って5年後には10GHzのクロックのチップが出てきてもおかしくありません。

ソフトウエア的には基本的に変化は無いでしょうが、ナップスターで有名になったグヌテーラがそのヒントを与えてくれます。 ナップスターとグヌテーラの最大の差はサーバーを必要とするかどうかです。 ナップスターは無料で個人の持つ音楽ソフトの交換の仲介をサーバーを使って行うものでした。 最近、ドイツの大手の音楽会社と提携をして、有料化されるようですが、技術的に見れば、特に目新しいものは無くてサーバー方式なのです。 片やグヌテーラはサーバーを必要としません。 個人と個人が直接結ばれるのです。 音楽の配信で言えば、個人と個人が直接音楽データを交換するので、問題となるサーバーが存在せず、著作権問題も何となく締まらない物になっていますが、技術的に見るととても興味深いものです。 こう言う技術はP2P(Peer to Peer)と呼ばれるもので、ロータスノーツの開発者が設立したグルーブネットワークスのGrooveやオムロンのJumonもこの分野に属する技術です。

Grooveは一見グループウエアに見えるもので、インスタントメッセージやファイル共有、掲示板などがありますが、通常のグループウエアはサーバーを必要とするのに対して、これはサーバーを必要とせず、各PC毎に通信が行われて、共有ディスクは各々のユーザのPC存在するのです。 こうする事により、問題となるサーバーの負荷をなくす事が出来ます。 各PCが分担して負荷を負担するのです。 更にはセキュリティも向上しますし、サーバーのダウンにも無関係になります。 UNIXの頃から言われてきた分散環境が真の意味で実現するのです。

Jumonは特に日本が先行している携帯電話での応用を考えて開発されました。 提携相手がバンダイである事もあって、現時点では対戦ゲームにポイントが置かれていますが、各々の携帯電話同士が直接やり取りすると言うP2P的な意味では将来の大きな方向でしょう。 GrooveもJumonも基本的にはインフラですから、このインフラの上でどう言うアプリケーションが動作させるのかは今後の大きな問題でもありますし、当然の事ながら大きなビジネスチャンスでもある訳です。

毎年の年の初めにはその年の予想というか予言をしていたのですが、今年は世紀が変わる大きな切れ目です。 しかし100年の見通しは出来ませんので、5-10年の予想にしてみました。 この記事を少なくとも5年後にもう一度見て、実際の出来事と合わせてみたいものです。






11月6日
今月はいろいろあって遅くなってしまいました。 10月の話題は何と言ってもトランスメタ社のクルーソーCPUチップを使ったノートブックが相次いで発表されたことでしょう。ご存知のようにクルーソーはインテルアークテクチャーを使わないチップで、AMDやVIAのようなインテル互換チップではありません。 全く異なるアーキテクチャーでソフトの差はコードモーフィングと名づけられた技術によって使う度に変換されるようになっています。 インテルアーキテクチャーを使わないと言う事は過去の諸々を引きずっている回路を使わなくて済むと言う事の他、チップがシンプルになることで消費電力を小さくする事が出来る訳です。 単にインテル非互換のチップで、少々チップ面積が少なくなると言うだけではインパクトが無かったのですが、更にきめ細かい消費電力制御を行うことにより、バッテリの寿命を8時間とか10時間とかに伸ばす事が可能になりました。 おまけにファンも不要で元々静かなはずのノートブックがやっと静かになりました。 この辺りは技術問題と言うよりマーケティング問題ですね。

未来永劫に続くような感じがしていた、いわゆるWintelアーキテクチャですがAMD辺りが互換チップを出して先鞭をつけましたが基本的にはWintelアーキテクチャには違いなく、互換メーカーは苦戦を強いられて、AMD以外はほとんど身売りを余儀なくされています。 変化はやはりLinux辺りからではないでしょうか? LinuxでWindows NT の上位アプリがかなり置き換えられました。 従来はライセンス料は必要なもののUNIXを使っていた分野がLinuxに飛びつきました。 従来のUNIXはSunの固有のものになってしまったので、要するにLinuxしか代替は無かったのです。

Windows CE の不振もあって最下位の分野のPDAや携帯電話の世界は非Wintelになってしまいました。OSはもちろんのことCPUに至っては全くIntelの出番はありませんでした。 IntelはARMと言うイギリス生まれのRISCタイプの組込み用CPUチップのライセンスを保有しているので、その行方を見守っていましたが、やはりと言うかIntelには合わなかったようです。 マイクロソフトやインテルのような大きな、従ってお金も人もたくさんある会社は何でも出来るように思えるのですが、なかなかそうは行かないようです。 私はどちらかと言うと組込みシステムの文化の技術の中で育ってきましたので、あんまり違和感は無いのですが、聞いたところではM社には組込みのリアルタイムの技術者が3人しかいないと言う事です。 真偽の程は不明ですが、ありうる話だと感じます。

これで上と下は侵食されてきたのですが、今回のクルーソーが衝撃的なのは、本来主戦場のはずの中クラスに敢然と乗り込んで来たという事です。 もちろんハードウエアは非インテルでも結局はマイクロソフトのOSを使いますので、AMDのチップを使うのと基本的には同じですが、その強固な一角が侵食されたと言う点では画期的です。 このチップを使用したノートブックパソコンは富士通、NEC、ソニー、日立などから出ているようです。 先日のPC World Expo でも展示されていたようです。 これらのうちNEC、日立は全く従来のノートブックと同じで特色がありません。 ソニーは画像に特化していますが自信が無いのか控え目な態度です。 後で述べるようにコードモーフィングを行うとパフォーマンスが落ちるので、Nativeコードで画像処理ソフトが書ければ面白いかもしれません。 この辺りは第2ステップでしょう。 最後は富士通で、これが最もクルーソーの特色を生かしていると思います。 要するにインターネット端末になっていて、無線による通信もサポートしています。 私も従来からサブノートと言う分野のユーザで、通常はメールのアクセスと出張旅費の計算のためのソフトもしくは表計算ソフト、プラス予定管理ソフトと日記帳があればそれでよかったのですが、ペンティアムの消費電力がどんどん大きくなるとこう言う小さいノートブックは作りにくくなるそうです。 そういう意味でサブノートの復活です。 サブノートの老舗のパナソニックはどうした? と言いたくなります。 羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くですかね。

これらのノートブックの特色はメインメモリが大きいことです。 通常は128Mbを搭載しているようです。 この内の16Mbは先ほどから言っているコードモーフィングのためのキャッシュメモリとして使うと言うことです。 クルーソーはインテル互換ではありませんから、WindowsシリーズのOSやその他のアプリケーションは、その都度クルーソーのコード(VLIW=超長語命令)に変換して実行しなくてはなりません。 それをこのメモリ領域に置いておいて、また必要になれば今度は変換せずに前に変換したものを使います。 このように変換が時として必要になるのであまり重い大きなソフトは実行が遅くなります。 まあメールをアクセスするくらいなら問題ないようです。

コードモーフィングはPCの電源を入れた時から動作し、BIOSを含めて全てがコードモーフィングされます。 従って将来、更に最適化されたコードモーフィングファームウエアが開発されたら、それは交換可能ですから、もっともっと性能が向上するかもしれません。 このコードモーフィングと言う技術は元々インテルがペンティアムを開発するときに、検討した技術のはずです。 あの当時はまだハード技術が未熟だったので、ソフトで解決すると言う動きがありました。 HPとの共同プロジェクトの計画もあったと記憶しています。VLIW=超長語命令もその時のアイデアです。 当時はハードの速度も遅くて、ソフト処理では間に合わなかったのではないでしょうか? 何しろ当時はクロックが50MHZとか言っていた時代ですから、クルーソーはその10倍以上の速度で動いています。 オブジェクト指向技術もそうですが、CPUの速度の向上はソフトの世界にも大きな影響を与えます。 従来は遅くて使い物にならなかったものが実用になってくるのです。 オブジェクト指向技術も最近話題を集めていますが、基本的な考え方は20年以上も前から存在しました。 しかしその通りにインプリメントすると当時のCPUでは遅くて使い物にならなかったのでしょう。

ついこの間までFM放送やTV放送の電波と同じ周波数を使っていたのにもビックリしましたが、最近では1GHzと30年前なら電波を出すだけでも大変だったものが1ビットずつ処理されると言うようなとんでもない状況になってきました。 1996年のCOMDEXで聞いたアンディグローブの予言も本当に当たりそうになってきました。 ちなみにそれは、2011年には10GHzのクロックで100KMips、10億トランジスタ、デザインルールは0.07ミクロン、絶縁のための酸化膜は20オングスロームで、要するに原子が20層並ぶ計算。






10月1日
前回はいかに日本全体が草の根からも「規制体質」になっているのかを思わず書いてしまいました。 こう言うことを書いていると、どんどんボヤキ漫才みたいになってきます。 世の中一般の事に関しては、私の知り合いがページを開いていますので暇があったら見てください。 今年の最初のころは記事も少なかったのですが、最近は筆の滑りがますます良くなったようです。

ちなみに前回触れたJPNICの登録料の件ですが登録料の2万円と登録手数料の1万円の計3万円プラス消費税が必要なようです。 支払はこれ1回で良いのすが、COMドメインなどのように35ドルを毎年支払わなければ行けない訳ではないようですが、それにしても少々高い気がします。 申請から登録までの時間は最短で1日と言うのがありますが、平均10日前後はかかっていていて、やはりその遅さは群を抜いています。 物の値段ということでは、最近久しぶりに秋葉原に行くことがあってノートブックの値段を見たのですが、これが物凄く安い。 店で一番安いものを見せてくれと言うと、国産大手のN社とT社の名前が挙がりました。 N社は売り切れでT社のものがたくさんありました。 CDも付いた本格的なノートブックが何と12万円以下でした。 流石に表示のLCDは綺麗なTFTではなくて少々見にくいDSTNでしたが、それなりに綺麗な画面でした。 ちなみに安さで有名なベンチャーのS社とかを聞いてみましたが、この値段では無いそうです。 むしろT社が対抗として安いものをぶつけた様です。 こう言うことを考え合わせると、やはりハード一流、ソフト二流と言う事でしょうか。 大企業がベンチャーに正面から競合すると言う問題や製造をどこでやっているかと言う問題はあるもののハードウエアの強さはやはり特筆すべきでしょう。

これに比べてソフト、サービス、事務作業の仕組みなどは遅れに遅れているようです。前述のJPNICの例を始めとして、日常の処理にPCが使われる事が少ないのでしょう。 今日たまたまテレビで Bill Gates の話を聞いたのですが、彼はメールを1日に100-200通受け取るそうです。 その内で返事を書かないと行けないのは30-50通だそうです。 これは私の感覚とも合いますし、また200通以上になるとその処理はとても難しくなります。 言い古された事ですが、やはり地道に日常の事務処理にもっとメールを活用して効率を上げるべきでしょう。今度の補正予算で初歩のPC教育を支援するために6兆円だかなんだかばら撒くことになりそうです。 以前の10兆円の商品券の二の舞になると危惧されていますが、まあ1人当り6000円ではほとんど役に立たないでしょう。

この前テレビで堺屋太一さんがこれに関して、商品券と間違われて困る、ちゃんと説明するとみんな賛成する、キチンとした名前をつけたら良かったが、発表する前に新聞にスクープされた云々。しかし小額のばら撒きには違いなく、いくらデジタルデバイドと言っても 6000円が出せない人がこれからいくらPCが安くなったからと言って買うはずも無く、無料PCを入手しても、結局3000円ほど毎月かかりますから、2ヶ月で使い切る計算になります。

民間企業に赤字になることはさせられない、と言っていないで法律でも何でも作ってNTTに接続料を下げさせるべきです。過去には一部の企業の負担になるような政策がたくさんありました。 携帯電話を見ても分かるように利用が増えれば黒字になるはずですから、その間の赤字が問題と言うなら、そのお金で補助するれば良いことです。 金融機関の「負の財産」の補助に何兆円も使うのなら、将来の発展のためにここでお金を使うのはバラマキより余程マシでしょう。

まず遅れ馳せながら市内通話をアメリカ並に定額にする。 基本料金にプラスするだけで、通常の家庭の負担はほとんど同じにします。 また料金計算の手間が省けるのでこの部分は大幅に経費が削減できます。それから光ファイバー何ぞ、という時間のかかるものは止めて、DSLをもっと強力にサポートする。 お隣の韓国ではDSLがかなり盛んに使われているようです。 光ファイバも結局は基本的な発想が公共投資的な土木工事であることが気になります。結局儲けるのは工事屋さんではないでしょうか。 ドッグイヤーのインターネットやITの世界では、将来の話ではなくて、今の時点で使えなければ意味が無いわけです。

ちなみに東京の特に山手線の内側のインターネット環境が如何に貧弱か最近に実感しました。 大手の会社はIIJとか大手のプロバイダに月に何十万円も支払ってそれなりの環境が構築できているようですが、一般のユーザや小企業となると、ほとんど環境は整っていないと見て良いでしょう。 DSLもたとえば品川区ではサポートされていません。 夜間の在住人口が少ないせいだろうと思いますが、5000円/月のレンジではCATVもほとんど使えず、せいぜいISDNのフレッツかPHSの64Kbpsが良いところで、まともなインターネットアプリを利用するには遅すぎます。 特にフレッツはMPをサポートしていないので64Kどまりで、MPを使うにはアイアイプランで3000円で6000円分が使えるというようなものでしょう。 これでも本気で使い出すと毎月の支払が1-2万円になることは間違いありません。 こう言う点を見てソフトバンクの Speed Net などが計画されたのでしょうが、残念ながら遅れに遅れています。 埼玉の方はモニターに参加できるようです。 いずれにしても初歩の初歩として、早急にT1(1.5Mbps)レベルの接続を5000円から1万円レベルで可能にしないとIT立国は夢のまた夢でしょう。
##スミマセン、 映画はしばらく休憩です。。






9月8日

最近、愕然とする経験をしました。 日本経済の停滞も本当の原因はこの当たりにあるのではないかと言う気にもなってきます。 実は日本のWebドメイン名を取得しようとしたのですが、その非効率さに愕然としたわけです。 従来はいつも必要な時は com とか net とか org をクレジットカードでWebの上で作っていて、申し込みは10分程度、実際に使えるようになるまではDNSのプロパゲーションなんかがありますから1-2日かかりますが、それだけです。 ドメイン名の登録がInter-NICで独占されていた頃はその対応の遅さにイライラしたものでしたが最近は改善されたようです。 反面、日本では規制が規制を呼ぶと言うような感じで、co.jp は各社1つに限る、とか ne.jp でも各社1つに限定されているようです。 これは10月ごろから緩和されるようですが、com や net がいくらでも取得できるのと大きな違いで、相変わらず会社の登記謄本が必要とか、その違いがますます大きくなっていっているような気がします。

従来の産業に規制があって、規制緩和が叫ばれていますが、なんとITの先端のインターネットの中でもこう言う日本独自の規制が生まれつつあるのですね。 これはつまり単に政府が規制緩和に後ろ向きだとか、森総理がITオンチだとか言う事以前に我々の中に規制を求める方向性が内在しているのではないでしょうか? おそらく聞いてはいませんが、Japan-NIC にもそれなりの理由があってこう言う規制が出来てきているのでしょうが、まったくの白紙の産業の中で自動的にこういう規制が自発的に出てくると言うのは空恐ろしい気がします。 規制が無いと確かに混乱はあるでしょう。 先にドメイン名を取られてしまって困っている企業も多くあります。 だからと言ってすぐに規制に走るのは国民性でしょうか? ITの盛んなアメリカにしろ、イギリスにしろ、こういう規制は全くありません。 こっちが拍子抜けするくらいに自由です。 ドメイン名で言うと、流石に mil とか edu はそれなりに資格が無いと駄目ですが、com、net、 org に関しては完全に野放しです。 以前はもう少し何らかの規則が有ったような気がしますが、少なくとも現時点では区別はありません。

毎日10万件が登録されていると言われるドメイン名。 確かにチョットしたイベントがあるとそれだけでドメイン名を設定します。 反面日本では、例えば co.jp を申請すると会社の登記謄本や代表印が必要となり大会社ほど大変になります。 時間も延々とかかって2週間では収まらないのではないでしょうか。 従って申請数は減り、その分申請料は高額になり、ますます申請は減っていく。 チョットやる気のある人は com や net で済ませてしまいます。 当然海外のサイトから申請する事が多くなり、料金が安い事もあって自然に海外のホスティングサービスを利用する事になり、インターネットの世界でも日本の空洞化が生じて来ています。 これではIT先進国のアメリカに追いつく事すら出来なくて、離される一方です。

この過程でもう一つ愕然とした事があります。 この申請はあるインターネットインフラ会社を通じて行ったのですが、この会社はプロバイダ事業も行う、私の見方では日本最大の独立系インターネットインフラ会社です。 しかしここの連絡は電話です。 連絡のメールアドレスを知らせてあるにも関わらず、電話がかかってくるのです。 当然不在ですから、連絡を受けてまた電話をかけると言う、一昔前の連絡方法を取っているのです。 私はこの会社を高く評価していたので、この一件でも愕然としたわけです。

数年前になりますが、私はアメリカで2社のプロバイダと付き合っておりました。 1社はほとんどの申請や設定がWebの上で可能であり、万一それで間に合わない場合はメールでの連絡になります。 ここはメールを受け付けると自動で受け付けた旨の返事を返して、実際の回答は24時間以内に行うと宣言していまして、実際にはその通りでした。 もう片方の会社は、何かと言うと電話をかけてくるのです。 こちらも向こうも不在の事が多いので、お互いに連絡を取るのがなかなか出来ません。 更に担当部門をたらい回しにされて、処理に時間がものすごくかかった事を思い出します。 この後は当然と言うか、出来すぎと言うか、後者の会社は前者の会社にアッサリ買収されてしまいました。 アメリカではこのようにチョット効率が悪い会社は他の会社に買収されてしまい、最終的には社会全体の効率が上がっていくと言う事でしょう。 日本ですと直接にそういう事は起こりにくいのですが、気がついた時には世界から遠く遅れてしまっていると言う事になります。

IT戦略会議も良いですが、こう言う草の根のところから直していかないと、いつまで経っても駄目でしょう。 またこう言う問題点は我々個人の中に内在しているものかも知れません。 個々人の日常の細かいところからチェックして行かないと駄目かもしれません。 いつか日本とアメリカの運転免許証の更新時のコスト比較をして、如何に日本が社会全体としても非効率になっているか書いた事がありますが、ITが景気を持ち上げるのは最終的には社会全体の効率が上昇しないと、単にPCを使うだけでは何も起りません。 全能のようにいわれているFRB議長で経済学者のグリーンスパン氏ですら、なぜアメリカの景気が10年以上にも渡って上昇しているのか、その原因はITにあるとは言いながらその正確なメカニズムについては口を濁しています。景気が好くなっているから良いんじゃない、とか、よく分からんがとにかくITが原因には間違い無い、と言うような発言がされています。 いずれにしても景気の向上には生産性の向上が必須であり、そのためには具体的なITによる日常的な生産性向上例が必要でしょう。

最近は映画を見る機会も減ったので、今月の映画はチョット古くなりますが、Haunting です。 昨年末の封切りですからほぼ1年前になります。 お話は古い屋敷に泊まったグループが夜になると悪魔の俳諧を目撃します。 屋敷全体が変形して、例えば壁の飾りも変形するのが見物です。 最後は参加者のわずかに残っていた先祖の力を借りて悪魔を封じ込めてめでたし、めでたし、となるのです。最近は日本のコマーシャルにも登場し、Entrapment や The Mask of Zorro でお馴染みの CATHERINE ZETA-JONES が主演です。









8月1日

後の方でちょっと詳しく触れますが、『ナプスター』更には『グヌーテラ』によってインターネットの本性と言うか、旧来の常識が通用しないと言うか、いずれにしても価値観の相違がとうとう表沙汰になってきたような気がします。 インターネットつまりウェブの上では何でも無料。 無料の検索エンジンに始まって無料の電子メール、最近ではMP3による音楽の「無料配信」が盛んになって来て問題がとうとう表面化しました。

従来の考え方でも例えばテレビやラジオの民間放送は広告収入を元に、聴視者は利用代金を支払う必要がありませんでした。 インターネットも同じく広告収入によるビジネスモデルが適用されて表面上は落ち着いていました。 しかし、オープンソースと言う当りから段々従来とは異なるぞ、と言う予感が出てきて、最近のMP3による音楽配信で対立は頂点に達してきました。 ついに本当の本質的な議論が必要になってきたのでしょう。 1

10年以上前からMITのリチャード・ストールマン氏が「ソフトウエアは本来無料であるべき」との信念でフリーソフトウェア・ファウンデーションを設立しコツコツとソフトウエアを作りつづけて来た事は知る人ぞ知る事実です。いくつかのソフトウエアは現在でも広く使われています。 当然これは無料なのでマイクロソフト社やサンマイクロ社の目の敵だったのですが、驚いた事に昨年の5月に両社がスポンサーとなっている『第8回国際WWW会議』で1万ドルの賞を受けたとの事です。 彼の長年に渡る努力は代表的オープンソースの『Linux』(リナックス)の開発に大きな影響を与えました。

さて問題のNapster とは、ユーザー同士がMP3ファイルを共有するためのソフトで、Napster社が設置しているNapster専用サーバーを介して動作します。Windows 95/98/NTで動作保証されており、Napster社のサイトから無料でダウンロードできます。日本語のパッチもあるようです(しかしこれを書いている間にサイトはアクセスできなくなってしまいました)。 ここでの問題は、Napster社は単にサーバーを用意しているだけで、アップロードもダウンロードもするのは個人が個人の責任でやるのだから著作権問題には触れないと言う言い分です。

しかしながら米レコード協会は、利用者はナプスターのサーバーにアクセスした際これまでに個人収集したMP3音楽を、同時にアクセスしている他の利用者にダウンロード提供することができ、ナプスターが膨大な著作権侵害に関わる、設備と手段を利用者に提供していると訴えていました。 ところが先週に米国の裁判所が違法の判断をついに下しました。 一般紙にも小さいですがニュースが載っていたのでご覧になった方もあると思います。 判決によればサーバーに搭載してあるのがMP3であると言う事をNapster社が明言しているところに問題があるようです。Napster社は当然控訴しましたが、当面はその活動を停止しなければなりません。

ナプスター的なプログラムは他にもあり『Imesh』『キュートMX』などがそうで、ユーザーはこれらを使うと、ネット上でマルチメディア・ファイルを見つけてダウンロードできます。また『グナップ』など、開発中のオープンソース・プログラムもいくつかあるようです。

ところがもっと基本的な物が現れています。『グヌーテラ』です。 これは基本的に分散システムでサーバーがありません。 お互いに接続された個人のPCのデータを共有するのです。 従って個人が所有する音楽を無償で個人的に譲渡すると言う事になります。 また、ファイルは特にMP3でなくても良いのでどのようなファイルでも共有できる訳です。 良く言われるセキュリティもへったくれもない、地球規模の一体のコンピュータの一部を使用すると言う感じです。 これは初期のインターネットの利用に極めて似ていて、その結果いまだにセキュリティ問題が解決しないのはこのような基本的なコンセプトがあったせいです。 言ってみればインターネットの本家帰りをしていると言っても良いでしょう。


グテヌーラは米アメリカ・オンライン(AOL)社の社員によって始められたファイル共有ユーティリティープロジェクトが、オープンソース支持者の手によって復活したもの。 このファイル共有ソフトウェアツールを作ったのは、AOL社に買収された米ナルソフト社の創立者で、人気のあるMP3プレーヤー『ウィンアンプ』を開発したジャスティン・フランケル氏とトム・ペッパー氏。 基本的なソフトはAOL社が所有しているので、すぐさま問題にはならないでしょうが、基本的な考え方は簡単で誰にでも似た物は開発できます。しかし既に現時点で、2000以上のホストが存在し、グヌーテラ・ユーザーのネットワーク上には交換可能なファイルが25万ほどあるとの事です。 公式なサイトは既に閉鎖されましたが、まだダウンロード出来る所はあるようです。

類似のプロジェクトには、アイルランドのプログラマー、イアン・クラーク氏による『フリーネット』と呼ばれる開発中のネットワークがあり、これはグヌーテラと同じく集中型の管理インフラを持たないシステムです。 開発の動機の第一目的は情報の検閲を非常に困難なものにするということだそうです。従って匿名性は極めて高いようですので、悪用しようとすれば問題ですね。

この方式のシステムの使い方の最大の問題は固定的なIPアドレスを知らないとアクセスできない事。つまりほとんどの接続がダイアルアップ方式あるため、ダイアルアップする度にIPアドレスは変わりますし、ISPによってはISP側からのアクセスを許していない事が多いので、通常のユーザはなかなか使えません。 しかしIPの常時接続がインターネットの本来の姿であるし、ADSLやCATVカーブルやいろんな方法でこれからは常時接続が急増する事が考えられ、この問題もいずれは本格的な論争に発展する事でしょう。 その時には著作権とは何か、所有権や使用権とは何かが新めて議論される事でしょう。 ストールマン氏の考え方から言えば、社会生活をする上で必要なものである限り、一定の使用料を使用の頻度に関わり無く支払い、その代わりにその使用は無制限とすべきでしょう。 現実の社会インフラである教育や道路などなどは一定の基準で定められた税金で賄われているのです。 将来はインターネットへの接続や、一般的な著作権などはこのような税金方式でまかなわれるようになるのではないでしょうか。


今月は本文が長くなったので映画は止めようと思ったのですが、チョットだけ。ロビン・ウィリアムズ主演のロボットNDR114のアンドリュー。 ロボットが主人公ではあるのですが、人が人として生きていくとはどういうことなのか、一つ高い視点からあらためて教えてくれるテーマを持った作品に仕上がっています。 ロボットの格好で演技できるロビンは凄い。。

もう一つは日米同時公開のミッションインポシブル2。トム・クルーズ主演の007と言う感じ。 従来のものとは大違い。 オートバイでのアクションが見物です。







7月2日

先日雑誌を見ていたら、とうとう7万円台つまり8万円ポッキリでPCがかえると言うものです。 アメリカでも最初は1000ドルPCと言って本体だけだったのですが。そのうちにディスプレイは付いてくるし、更にはプリンタまで付いて来る始末。 日本の8万円PCはプリンタを除いて為替計算をしてもまだ安いですね。 数ヶ月前ですがシリコンバレーのさる有名ショップでCPUとメモリ、ディスク抜きで200ドルと言うのがあって、当然サウンドや100Base-TのLanもオンボードで付いています。これに安くCPU等を付けるとそれなりに安い物が出来ると思っていたのですが、やはり最先端のところではそんなレベルでは無いようです。 日本は流石にPC産地の台湾や中国に近いのでトコトンまで行くとかなり安いようです。 またディスクも安くなりましたね。 何と30Gbぐらいの物が2-3万円で入手できます。 つい最近まで9Gbのフルハイトの大きなものを10万円以上出して買った事が夢みたいです。

ハードウエアの Thin Client化はコストそのものの大幅な低下で、一時流行った500ドルコンピュータは見る影もありません。 Thin Clientは10年以上前のX-Windowターミナルがその原点でしょう。 当時はUnixワークステーションが高かったので、Unixの標準ウインドウシステムであるX-Windowを動かす安価なターミナルと言う感覚で作られました。 それより少し前のウインドウが無かった時代にはユーザインタフェースはキャラクタターミナルでした。 これも最初は100万円ぐらいしてとても高かったのですが、当時はA社が20万円ぐらいで出してほとんど標準になってしまいました。 その時はUnixワークステーションの本体も3-400万円していて、ターミナルを使って複数のユーザが使用しておりました。 その後100-200万円に下がってターミナルと言う考えは無くなって、すべてウインドウシステムとなり、WSは真のパーソナルユースとなったのでした。

時は移ってマイクロソフトの影響力が最大に達した頃、つまりWindows95がお祭り騒ぎのうちに発売された頃、これに対抗しようとThinPCとしての500ドルコンピュータが考えられました。しかし綿密なコスト計算の結果、期待したようなコスト低減は見込めない、と言う事でうやむやのうちに消滅してしましました。 これの発展形としてはWindowsターミナルがあるようです。つまりWindowsだけを動かすターミナルと言う訳ですが、あまりメジャーになったと言う訳ではなさそうです。

このThin Clientの考え方は、分散システムと集中システムの議論が永遠に続いているように、常に顔を出してきます。 最近の方向としては、インターネット上のサービスとからんで、ソフトウエアのThin Client化とでも言うべき、ASP的ソフトウエアの動きが急です。 ハードウエアはどんどん値段が下がるし、Windowsであれ携帯であれプレステであれ大体の方向は見えてきたのですが、それに見合うソフトウエアのあり方と言うか姿がこれです。 つい最近もジャストシステムがこの分野に参入して2003年には500万人のユーザを対象に150億円の事業をする言う計画を発表しました。 つまりソフトウエアを一種のサービスと見なして、例えば1回ワープロを使うたびにいくらか小額を徴収すると言うもの。 この背景には例えばマイクロソフトのオフィスがどんどん巨大化して、それだけなら良いのですが毎年毎年バージョンアップしてそれに追いつく費用が巨額になってきた事です。 ソフトウエアベンダーとしてはそれが飯の種なんでしょうが、ユーザとしてはたまったものではありません。 結果的にバージョンアップはいい加減にしておいて古い物を使うと言う事が状態化しつつあります。 これをサービス的にしておくと供給側は常に最新のバージョンを提供できて、古いバージョンのメンテナンスやサポートは不用になります。 また実態はかなりひどいようですが、ソフトのコピーも防止できます。 ジャストシステムではユーザの要望を際限なく取り入れた結果お化けのような強大なソフトウエアになってしまってこれ以上のバージョンアップは不可能と言う事です。 この場合でもサービス化する事で個々のユーザに最適な部分だけを選んで使ってもらう事が可能です。

このような目的のためには前回ご紹介した「Dosule!」と言うのがグループウエアや予定表などの個人情報管理のアプリケーションの例です。 紹介した直後にこの会社はYahooに買収される事になってしまいましたが、携帯との関連を含めてこれからの重要な分野です。

ソフトウエアそのものと言う感じでは Think Free Office と言うものがあります。何とマイクロソフトのオフィスのデータとコンパチでユーザインタフェースもほとんど同じ!!と言う力作です。 本体はファイルマネージャーを含めてJavaでかいてあるそうで、CPUパワーの小さなPCでは少々遅く感じられます。 こんな力作なのに現在はFreeです。おまけに20Mbのディスクスペースもあって、これも友人を紹介すると5Mbづつ増えます。 こう言うシステムがあるとメモリの小さな携帯やPDAでもそれなりの大きなファイルの処理が出来ます。 また大きなワープロ文書の修正などが容易に出来るようになるでしょう。 データがサーバーにあると言う事でセキュリティ等が確保されてバックアップの必要も無くなります。 日本語も通るので一度試してみてください。

この他には My Internet Desktop とか Half Brain とかがありますが、完全にマイクロソフトコンパチでは無いようです。それぞれに工夫をしてローカルとリモートの差を意識しない様になっています。 このようなASP的なソフトウエアと携帯やPDAなどの本当の Thin Client と広帯域通信(出来れば無線)の組み合わせが近い将来のコンピュータ像ではないでしょうか?

今月の映画はかなり古くなって、7月よりレンタルビデオが封切りになる「End of Days」です。 ご存知シュワちゃんことシュワルツネッガー主演の要するに1999年12月31日を睨んだ作品です。 従って今見てもしょうがないと言えばしょうがないでのですが、まあアクション、セックス、宗教なんでもありの娯楽映画としてみれば良いのでしょう。 お話の発端は、この世に何千年かの時代を経てとうとう悪魔が復活すると言う予兆が彗星に現れたと言う事から始まります。 この悪魔が人間の格好をしていて、1999年の大晦日までに予めこの世に運命付けて生まれていた女の子とセックスすると本当に悪魔が復活すると言うもの。シュワルツネッガーのアクションとその周りのコンピュータグラフィックスが見物です。 理屈なしに楽しんでください。 理屈を考え出すといろいろ悩みは大きくなります。